死刑求刑に「安堵した。僕がやるべきことやれた」遺族涙 京アニ放火殺人事件

京アニ事件の論告求刑公判を終えた後、取材に応じる寺脇(池田)晶子さんの夫=7日午後4時20分、京都市上京区

 36人が犠牲になった京都アニメーション放火殺人事件で、殺人罪などに問われた青葉真司被告(45)の裁判員裁判の論告求刑公判が7日、京都地裁であり、検察側が死刑を求刑した。妻を亡くした遺族の男性も「最も重い刑罰を望む」と意見を述べ、閉廷後の取材に「妻と残された息子のために、僕がやるべきことはやれた。検察の求刑にも安堵(あんど)した」と目を潤ませて語った。夫、父親として背負ってきた使命感がにじんだ。

 「アニメーターとしての明るい未来と、子どもと歩む幸せな人生があるはずだった。妻は正直、青葉さんを恨んでいると思う」

 7日午前11時半、亡くなった寺脇(池田)晶子(しょうこ)さん=当時(44)=の夫(51)は被告をまっすぐに見据え、法廷に語りかけた。

 約15分間にわたった意見陳述では「刑法で定められた最も重い刑罰を望む」と述べた。そして、妻と母親を失った息子への思いを裁判官、裁判員らに伝えた。

 「判決は、12歳の息子が聞いて理解できる内容であってほしい。晶子が受け入れられる判決を、仏前に報告できるよう、強く強く、望んでいます」

 閉廷後の取材に、夫はこれまでより明るい表情で語り始めた。「検察は、晶子が望むであろう求刑をしてくれた。安堵しました」

 約3カ月間、続いてきた裁判。被告人質問に3度立ち、意見陳述で被害感情を語った。妻と息子の悲しみ、無念を法廷で伝えることができるか不安になり、青葉被告や弁護人の言動に傷ついたこともある。眠れぬ夜も過ごしてきた。

 それでも、6日の被告人質問では青葉被告から謝罪の言葉を引き出し、妻と息子が言いたいであろう求刑をすることはできた。結審を迎えた心境を聞かれ、こう答えた。

 「僕にとって精いっぱいのことはできた。『晶子、これで満足してくれるか』と、やっと報告できるかな」

 判決は来年1月25日。妻と子どもが、納得できる結果を望んでいる。

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