ハタハタ99%減、笑えぬ大黒様 庄内沖漁獲量、平年比

庄内地域の冬の味覚・ハタハタ。今年も不漁となっている=6日、鶴岡市・由良漁港

 庄内沖でのハタハタの水揚げが芳しくない。不漁は3年連続で、漁獲量は11月末現在1トン余り。秋田など日本海側の各県も同様の漁獲だ。庄内地域では、あす9日、ハタハタなどを食べる伝統行事「大黒様のお歳夜(としや)」。価格は高騰しスーパーや鮮魚店は冷凍物で対応しているが今後、ハタハタが確保できるかは不透明な状況だ。大黒様の年越しは、今年も穏やかではない。

 県漁業協同組合によると、本県の過去10年の漁獲量は、2014年度の約400トンがピークで、20年度までは140~380トンで推移していた。変化が顕著になったのは、21年度で76トンまで減少。22年度は46トンだった。県水産振興課のまとめでは、今年9~11月の漁獲量は計1.4トン。冷え込みが強まると、漁獲も増える傾向にあるが、今季は11月に入っても各港では揚がっておらず、前年同月比95%減。平年の同月比では99%減だ。専門家の中には、温暖化による海水温上昇で、回遊ルートが変化し、資源も減少しているとの見方もある。

 酒田市のスーパー「ト一屋」は昨年に続き、冷凍物で対応する。ただ、秋田県で水揚げされた物で、仕入れ値は例年の2倍。値上げせざるを得ず、お歳夜の9日の店頭価格は1匹600~700円ほどになる。ハタハタの田楽入りの御膳や「大黒様セット」も並べる予定だが、同社の鮮魚担当者は「今年は地物がほとんど流通していない。来年は冷凍物すら入らないかもしれない」と頭を抱える。

 ハタハタを焼くのが風物詩となっている鶴岡市の梅津鮮魚店でも地物の確保が難しく、秋田産を主に仕入れている。現段階で用意できているのは、例年の半数程度の約120キロ。店主の梅津亮一さん(60)は「注文は例年並みだが、いつも10匹頼む人が5匹に抑えるなどしている」と、値上がりを見越した状況での変化もあるという。

 酒田市の酒田北港は毎年、接岸するハタハタを狙う釣り人が堤防に並ぶ光景が風物詩だ。ただ21年以降、本格的な接岸は確認されていない。6日夕、鶴岡市の由良漁港で底引き網漁船が水揚げしたハタハタは数ケースほど。漁業者の一人は「ハタハタはもう高級魚だ」とつぶやいた。大黒様は七福神の一つ。例年通り、年越しをしてもらいたいが、漁業や流通の関係者は漁獲量復活に向け、神頼みしかない状況だ。

ハタハタと大黒様のお歳夜 ハタハタは本県沿岸に産卵のため接岸する。青森―石川の北部日本海を回遊し、寿命は5年程度。この時期は200~300メートルの水深にいる2~3年魚を底引き網で漁獲する。庄内地域では、豊作と子孫繁栄などを願い、大黒様が年を越し妻を迎えるとされるお歳夜に、焼きハタハタの田楽、黒豆ご飯などを食べ、二股の「まっか大根」を供える風習がある。

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