ポッポッポッポッ…映画「ゴジラ-1.0」のあの音が実は プロも出合いに感激、明石製・焼玉エンジンの魅力

焼玉エンジンの音が使われている映画「ゴジラ-1.0」のシーン©2023 TOHO CO., LTD.

 全国東宝系にて公開中の映画「ゴジラ-1.0(マイナスワン)」に、明石発動機工作所(兵庫県明石市港町)にある1945(昭和20)年製の焼玉エンジンの音が使われている。終戦直後の日本で、海に残る機雷を除去する木造船のエンジン音として“出演”。同工作所4代目の金井清さん(72)は「まさかゴジラ映画に使われるとは」と感激している。(松本寿美子)

 

機雷除去の木造船として“出演”

 焼玉エンジンは、大正から昭和に活躍した明石発祥の活魚運搬船「明石型生船」などに搭載された動力。穏やかな「ポッポッポッポッ」という音で、同工作所など、明石の発動機メーカーが明治38年から昭和40年代前半まで製造した。

 金井さんの焼玉エンジンは2021年6月、三重県の鳥羽商船高等専門学校から譲り受け、四国の愛好家と約1カ月間かけ修繕した。愛好家を介し、間もなく映画のスタッフが「録音させてほしい」と訪れた。

 当時は「『ALWAYS三丁目の夕日』を制作した山崎貴監督の映画」としか知らされなかったが、今年4月に再録音に訪れた際、ゴジラの最新作に使われることを聞き「あのゴジラかいな」と驚いたという。公開初日に神戸で鑑賞し「一瞬やけど音はよう分かった。エンドロールの社名もうれしかった」と振り返る。

 

「人間が造った温かみある鼓動感」

 もう一つ、愛好家団体「生船研究会」事務局も担う金井さんを喜ばせたのは、焼玉エンジンの音を立てる劇中の船の名が、明石型生船の第1号「新生丸」と同じだったこと。「船にはよくある名前とはいえ縁を感じた」としみじみ。「ディーゼルの音でも普通の人には区別がつかないのに、焼玉の音にこだわってくれたところがプロのすごさ」と感服する。

 今回の映画の録音助手、大堀太輔さん(42)=川崎市=は「焼玉の音の魅力は『機械だけれど人間が造った温かみがある鼓動感』。農業用の小さなものはあるが、船舶用で大きく、しかも現役で動くものは貴重。僕らこそ出合えたことに感動した」と感謝する。

 金井さんは「人間ドラマがある素晴らしい作品で使ってもらえて良かった。明石の発動機と生船をPRしていきたい」と意気込み、大堀さんも「ぜひ劇場へ。(前作の)シン・ゴジラを抜きたい」とPRする。

 OSシネマズミント神戸などで上映中。

© 株式会社神戸新聞社