「鵜様の宿」1日限定復活 七尾から羽咋・気多大社へ

カゴの中の鵜様に手を合わせる住民=七尾市鵜浦町

 16日に羽咋市の気多大社で営まれる国重要無形民俗文化財「鵜祭(うまつり)」で主役となるウミウ「鵜様(うさま)」を歩いて運ぶ鵜様道中は12日、3日間の日程で2年ぶりに始まった。鵜様が収められたカゴを背負って出発した鵜捕部(うとりべ)3人は、七尾市中心部までの約20キロを歩き、行く先々で住民が手を合わせた。定宿となっていた市内の旅館は今年5月末に閉業したが、「鵜様のために」と1日限りの復活を果たし、鵜捕部はゆっくりと体を休め、鵜様を無事に届けることを誓った。

 鵜捕部は七尾市鵜浦町の小森一平さん(43)、磯野晴夫さん(65)、岡野克之さん(46)が務める。3人は午前6時20分ごろ、鵜様を預かっていた小森さん方から出発し、「ウットリベー」の声を響かせながら歩みを進めた。

 一行を見かけた住民は沿道や自宅前で鵜様を拝み、「今年は捕れて良かったね」「気をつけて行ってきてください」と声をかけた。

 鵜捕部は午後3時半ごろ、1日目の宿である大手町の「さたみや」に到着した。40年以上、鵜様道中の宿としても使われてきたが、施設の老朽化や後継者がいないことを理由に5月31日、営業を終了した。

 主人の佐田味(さたみ)良章さん(70)は「ずっとお世話になってきたので、恩返ししたい」との思いから、今年も宿として提供することを決めた。旅館を営業していた当時と料理などのもてなしを変えることなく、鵜捕部たちの労をねぎらった。

 佐田味さんは「来年以降もできるかは分からないが、可能な限り受け入れたい」と話した。

 13日には七尾市の能登生(いく)國玉比古(くにたまひこ)神社(気多本宮)の新嘗祭に臨み、14日に気多大社に到着する予定。神事は16日未明に営まれる。

 道中で2日目の宿泊先となる中能登町良川の鵜様道中ミュージアムでは、鵜様の伝承をモチーフにしたライトアップが行われており、LED(発光ダイオード)約5千個を使い、青色の光が辺りを彩った。14日まで。

鵜捕部を出迎える佐田味さん(左)=七尾市大手町

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