「共助は新たな被害を生む危険性もあるのでは」自分の命が…災害時の“共助”のリスク「安全確保が大前提」【わたしの防災】

災害時には、行政が住民を助ける「公助」には限界があり、自分の備え「自助」や、お互いに助け合う「共助」が必要だとされています。しかし、危険が迫る中、人を助けようとして自分が命を落としてしまうケースが最近、目立ってきたと専門家が指摘しています。

【写真を見る】「共助は新たな被害を生む危険性もあるのでは」自分の命が…災害時の“共助”のリスク「安全確保が大前提」【わたしの防災】

<静岡大学防災総合センター 牛山素行教授>
「共助は、新たな被害を生む危険性もあるのではないかと以前から懸念していた」

大雨災害での人的被害について研究する静岡大学の牛山素行教授です。牛山教授は、家族以外の人を助けようとして自分が命を落としてしまうケースを「共助死」と呼び、分析の結果を2023年10月、日本災害情報学会で発表しました。

2004年9月、愛媛県新居浜市で発生した土砂崩れです。当初、2人が巻き込まれ、隣の家に住む60代の男性と30代男性が救助にあたりました。その作業中、再び土砂崩れが発生し、隣の家の2人も犠牲になりました。

2019年10月には、宮城県石巻市で避難の呼びかけをしていた地区の区長が増水した川に転落し、死亡しました。

2022年、静岡県内でも同じようなケースがあり、川根本町で地区の見回りをしていた副区長が陥没した道路に転落し、命を落としました。

<静岡大学防災総合センター 牛山素行教授>
「洪水、土砂災害は最初の段階では普段と全く変わらない。どこかでワッと急に危険性が高まって、そのタイミングを読み取るのが非常に難しい」

1999年から去年までの風水害の犠牲者1521人について調べたところ「共助死」のケースは少なくとも10人で、そのうち5人が直近の5年間に集中しているといいます。

<静岡大学防災総合センター 牛山素行教授>
「もしかすると近年の『共助』の重要性、そういった行動の活発化によって若干、増え気味なのかも知れない」

「共助」が大切だと認識が広がったのは、1995年の「阪神・淡路大震災」がきっかけです。

倒壊家屋からの救出で公的機関の手が回らず、互いに助け合う「共助」が機能しました。地震災害で一番危険性が高いのは発生の瞬間で、リスクは徐々に下がっていきます。一方、近年増えている洪水や土砂災害では、その逆で、時間が経つにつれ、危険性が高まっていくのです。

<静岡大学防災総合センター 牛山素行教授>
「懸念しているのは、子どもが共助死すること。高校生は災害時に地域の戦力だとか、助けられる側から助ける側へとか、こういったフレーズにある意味あおられて、その結果、命を落とす、こんなことがあってはいやだなと、こういう厳しい言葉を使った」

牛山教授は「共助」が目的であっても、まずは各自の安全確保が第一で、それを強調していくことが痛ましい被害を無くすために大切だと訴えています。

今回の調査では、同居家族の救助や自宅の浸水を防ぐなどの「自助」的なケースは含まれていません。そうしたケースも含めれば、安全確保を第一に考えることで、助かる命は沢山あるとみられます。

© 静岡放送株式会社