「天才肌で順応性が高い」。KCMGに聞く福住仁嶺の印象と“オーディション”の裏側、ゼッケン変更の理由

 12月12日に都内で行われたTOYOTA GAZOO Racingの2024年国内モータースポーツ活動体制発表会。スーパーフォーミュラでは、ホンダから移籍する福住仁嶺をKids com Team KCMGが起用することが明らかとなり、大きな注目を集めた(福住自身は体調不良により、発表会を欠席)。

■テストでの“2番手”を悔しがっていた福住

 KCMGは12月6〜7日に鈴鹿サーキットで行われた合同テストで、1日目に関口雄飛、2日目に福住を起用した。のちに加地雅哉TGRモータースポーツ技術室室長も認めたように、これはふたりの間でのオーディションが目的でもあった。

 テストでの福住の印象についてチームの土居隆二代表は「もともと天才肌だとホンダ系の人からも聞いていましたが、そうだと感じましたし、本当に順応性が高いですね」と感心した様子だった。

「やっぱり乗る前は初めてのトヨタエンジンで、初めてのチーム。しかも(乗れるのは)1日しかないというところで、けっこう力が入っていたと思います。加えて、雄飛があの順位(セッション1でトップ、セッション2で4番手)だったので、いきなりハードルがグッと上がり、本人も『ちょっと緊張しています』というようなことは言っていました」

「だけど、いざ乗ったらコメントもしっかりしていますし、取捨選択のところも、そのときの症状に合わせて取るところ、決める方向性など、自分でいろいろなことを感じて伝えていましたし、チームからの提案も素直に耳を貸して、素晴らしいパフォーマンスを見せてくれました」

 福住は、最後のセッション4でチームメイトの小林可夢偉に0.041秒届かず2番手に終わったことを悔しがっていたとのこと。その様子も土居代表にとってはポジティブに映ったという。

「雄飛がセッション1でトップだったので、仁嶺も『自分に(可能性が)あるのはトップしかない』と考えたと思います。最後に100分の4秒差でトップを獲れなくて、クルマを降りてすごく悔しがっていました。そういうところは、我々の初優勝に向けて大きな力になってくれるのではないかなと思います」

 いきなりセッション1でトップタイムを記録した関口と、2日目には2番手になるものの関口より速いタイムをマークした福住。「甲乙つけ難い結果を出してくれました」と、どちらのドライバーをレギュラーに選ぶか直前まで悩んだようだが、最終的に福住の起用を決断した。

「仁嶺に連絡をした時は『これで、ゆっくり寝られます。何も安心できることはなくて、ずっと心配していました』と言っていました」と土居代表。

 同時に、関口に対しても「『まだまだ自分はいけるんだ』というところを雄飛は見せてくれました。クルマ作りが上手でしたし、コメントもしっかりしていて、チームを引っ張っていくというところも見せてくれて、本当に感謝しています。お互いにとってすごく良いテストになったと思います。今後、何らかの形で関わってくれればいいなと思って、話をしています」と、感謝の気持ちを伝えるとともに、今回の縁を今後に活かしていきたい考えも土居代表は示した。

2023スーパーフォーミュラ合同/ルーキーテスト 関口雄飛(Kids com Team KCMG)

■「リスペクトの気持ちを込めて」使用を控えていたゼッケン8

 なお12日の発表に際しては福住の加入だけでなく、KCMGが来季使用するカーナンバーについても話題となった。来季は可夢偉が引き続き7番を使用するかたわら、国内トップフォーミュラ挑戦を開始した2010年から使い続けてきた18番から離れ、福住が新たに8番をつける“連番採用”になるのだ。

 これまでスーパーフォーミュラのみならず、参戦する国内外のカテゴリーで『18』を使用してきたKCMG。今回の変更理由については、「1台体制の時は18番を使っていましたけど、2台体制になってからは可夢偉選手がWECでも7号車に乗っているということで、7番を使うようになりました。本当は、その段階で8番も使おうと思っていました」と土居代表は説明する。

 KCMGが2台体制になったのは2020年シーズンからだが、その前年まではチーム ルマンがカーナンバー7と8を使用していた。特に8番に関しては、同チームが長年エースナンバーとして前身のフォーミュラ・ニッポン時代から使用してきた番号だ。それゆえに『国内トップフォーミュラでの8番=チーム ルマン』というイメージは、当時も少なからずあった。

 2020年以降はチーム ルマンがスーパーフォーミュラに参戦しなくなったことで、8番は“空き番号”になったのだが、土居代表は彼らへの敬意を表し、すぐに8番へ変更することを控えていたという。

「チーム ルマンさんへのリスペクトの気持ちも込めて(すぐには)使わなかったんです。そうこうしている間に……現在まで来てしまいました(苦笑)」

「やはり(カーナンバーが)離れていると、不具合もあったりするので、どこかのタイミングで変えようと思っていましたけど、ちょうどドライバーも変わりますし、僕たちとしても初優勝を目指して、心機一転ということで、8番に変えることにしました」

「ブランパン・シリーズやGTワールドチャレンジなどでは基本的に18番を使ってきましたけど、特にこだわりを持たずに、7番・8番で行くことにしました」と、土居代表は慣れ親しんだ18番から離れる寂しさというよりも、チーム初勝利のために前へ進みたいという気持ちが強い様子だった。

2023スーパーフォーミュラ合同/ルーキーテスト 福住仁嶺(Kids com Team KCMG)

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