【フィリピン】財閥2社、再エネ開発競う[資源] 30年照準、政府目標の7割へ

アボイティス・パワーが開発した太陽光発電所(同社提供)

フィリピン大手財閥のアボイティス・グループとアヤラ・コーポレーションの発電部門が、国内で再生可能エネルギーの開発を競っている。2030年ごろまでの発電容量は2社合わせて政府目標の約7割に相当する1,260万キロワットになる見通しだ。政府が規制緩和や補助金などで後押しするなか、今後は外資も含めた競争が激しくなりそうだ。

アボイティス傘下の発電大手アボイティス・パワー(APC)は12日、今後数年間で再エネ事業を8件稼働し、30年ごろまでに発電容量を460万キロワットに引き上げると発表した。現在は約100万キロワットにとどまる。24年は設備投資に前年比60%増の約500億ペソ(約1,300億円)を投資する。

プロジェクトの内訳は、太陽光発電所が3件、風力発電所が2件、2次電池電力貯蔵システム(BESS)が2件、地熱発電所が1件。北部ルソン島のサンバレス州で進めているオロンガポ太陽光発電所は発電容量が21万1,000キロワットと、同社にとって最大規模の太陽光施設となる。

アボイティス・パワーのフアン・アボイティス最高財務責任者(CFO)は「太陽光発電は日照時間に左右される点において高コストだ。電気代の高騰を防ぐためにもベースロード電源を確保する必要があり、バランスの取れた再エネ移行が求められる」と述べ、選択肢を増やしていく意向を示した。

競合のアヤラ系発電会社ACEN(旧ACエナジー)は開発する発電源の98%を再エネが占める。再エネの発電容量は現在の約170万キロワットから30年に約800万キロワットに増やす計画だ。海外を加えると2,000万キロワットに拡大する。現在は国内で太陽光発電所を4件、2次電池電力貯蔵システムと風力発電所を各1件開発している。

ACENのエリック・フランシア社長兼最高経営責任者(CEO)は「事業は堅調に成長している。24年半ばまでに70万キロワット相当の新規事業を稼働する」と話す。

両社の再エネの発電容量は30年までに計1,260万キロワットに達する見通し。政府は30年に同1,784万キロワットを目指しており、目標水準の約7割を占めることになる。

エネルギー省は40年までに再エネ電源比率を50%(同5,730万キロワット)に引き上げる方針を示している。電力需要は年5%以上のペースで増える見込み。化石燃料による炭素排出を減らしながら需要に対応するため、再エネの開発を加速することが求められる。

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