金沢のくわい生産ピンチ 後継者不足深刻 わずか3軒、ピークの1割 

初競りでくわいの品質を確かめる髙田さん=14日午前6時10分、金沢市中央卸売市場

 藩政期に栽培が始まり、おせち料理に使われる加賀野菜の一つ「くわい」の生産者が産地の金沢市で減少している。寒さが厳しい冬場の収穫作業は重労働で、高齢で引退する人が増え、生産者数はピークの1990年代の1割ほどの3軒となった。市中央卸売市場で14日に行われた初競りには96キロが持ち込まれ、生産者は「生育は良好。今後も伝統を守り、高品質なくわいを作り続けたい」と意気込んでいる。

 芽が出たくわいは「めでたい」に通じる縁起物として人気がある。金沢では江戸前期ごろ、加賀藩5代藩主前田綱紀が農業の奨励策として栽培を始めたとされる。金沢市小坂地区を中心にピーク時には約20軒前後の農家が栽培し、約4トンを出荷していた。市農産物ブランド協会が2002年、加賀野菜に認定した。

 JA金沢市御所くわい出荷組合によると、くわいは病害虫に弱いことに加え、出荷時期も短く収益が少ないなどの理由で若手が栽培せず、農家の高齢化で次第に生産者数が減少した。収穫量も最盛期の1割ほどに落ち込んでいるという。

 今季は約9アールで50~70代の3人が小坂地区で栽培した。初競りでは1ケース(4キロ入り)1600~9千円と例年並みの値が付いた。24日までに約600キロの出荷を見込む。同組合の髙田一男部会長(78)は「多くの人に食べてもらい、魅力を広めたい。兼業農家として担い手も探しており、栽培の文化を絶やしたくない」と話した。

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