カクテル「雪国」で知られる酒田市の喫茶店兼バー「ケルン」と、同市の老舗和菓子店「小松屋」が、15日に同市船場町1丁目の一体型店舗で新たなスタートを切る。ケルンは建物の老朽化による閉店を、小松屋は事業停止を余儀なくされ、新店舗は旧回船問屋家坂亭の隣に立地する。14日に内覧会が開かれ、両店主は「出会いが生まれる場、歴史文化を感じられる場にしたい」と語った。
ケルンは雪国の考案者でバーテンダーの故井山計一さんが1955(昭和30)年、同市中町に開業した。長男多可志さん(71)が引き継いだが、入居ビルの老朽化などにより今年5月末で営業を終えた。小松屋は1832(天保3)年創業で、「呉竹羊羹(ようかん)」や雛人形とともに飾る「雛菓子」が親しまれてきた。業績悪化で2019年にのれんを下ろした。
両店をつないだのが、酒田の歴史文化を学べる施設として22年にオープンした家坂亭だった。事業停止後、同施設の管理人を務めていた小松屋9代目の小松尚さん(71)が呉竹羊羹の復活を願う声を周囲から聞いた。一方、多可志さんは新店舗探しが難航していた。同施設を所有する仮設機材工業(酒田市)が一体型店舗の新設を提案し、2人は再起を決めた。
新店舗は仮設機材工業が整備し、2店に貸与した。木造平屋で延べ床面積72平方メートル。各店舗用の入り口がある。ケルンはケヤキの一枚板のカウンターテーブルや入り口の扉など旧店舗の調度品を活用した。小松屋はカウンターと調理室を備えた。
多可志さんは「この年齢で新しい店を始められることは本当に幸せだ」と万感の様子。小松さんは「伝承されてきた呉竹羊羹、季節の素材の良さを伝えられる和菓子を提供したい」と意気込んだ。