県公立高入試に「前後期」導入、検討委が報告書提出 歓迎の一方、懸念の声も

高校入試の方法改善に関する報告書を高橋広樹県教育長(中央)に提出した阿部宏慈検討委員長(左)=県庁

 県公立高校入試の方法改善検討委員会は15日、全校で前期・後期選抜を導入する報告書を高橋広樹県教育長に提出した。中学生の保護者は「チャレンジの機会が増える」と歓迎する。一方で、入試期間の長期化による負担増、学力低下に懸念を示す学校関係者も。他県では本県とは逆に、「前期」「一般」などに分かれていた日程を一本化する動きもある。

 改善の狙いは、全校に複数の受験機会を設けること。中学2年生の子どもを持つ最上地方の男性(40)は「受験はプレッシャーがある。2回できるのはありがたい」。特に「進路への意識が高い生徒や明確な志望校を持つ生徒へのメリットは大きい」と捉える。

 対照的に、働き方改革が急務の学校からは不安が漏れる。1月中下旬に実施される前期A日程の願書受け付けは年始早々に始まる。村山地方の中学校長は「1月から3月まで、さみだれ式に入試があり、落ち着いて教育課程に取り組めるだろうか」と話す。

 ある元県立高校長は「他県で廃止した制度を導入しようとしている」と批判的だ。福島県は2020年度入試から、面接や小論文などによるI期選抜(2月)と学力検査を行うII期選抜(3月)を一本化した。

 理由は、入試期間の長期化に加え、I期で学力検査を実施しないことによる学力低下が問題視されたこと。現在は「特色選抜」と「一般選抜」を同時に行い、共通の学力検査を課している。秋田県や群馬県も同様の流れだった。

 元校長によると、もともと志願者が多い上、前期の募集定員を少なく設定する高校は倍率が非常に高くなり、多くの受験生が落ちる。その結果、後期で「入りたい高校」から「入れる高校」に志願校を変える傾向も生じると指摘する。

 元校長が最も心配するのは学力低下という。本県の前期(特色)選抜に学力検査が必須ではないことから「深刻になるのではないか」と危惧する。

高校入試改善報告書のポイント

 前期(特色)選抜を1月中下旬のA日程か、2月初めのB日程で実施。個人面接、集団面接、作文、発表、その他(小論文、実技、口頭試問、学校ごとの学力検査)から一~三つを高校が選ぶ。募集定員は原則5~50%で学校が決める。後期(一般)選抜は現行の学力検査で、3月7日に行う。

 現在の中学1年生が対象となる2026年度入試からの導入を予定しているが、定員割れしている普通科は前倒しして25年度入試からの実施も可能。

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