動かぬ鵜様、新年は「慎重に」 気多大社で2年ぶりお告げ

本殿に放たれ、たたずむ鵜様=16日午前3時25分、羽咋市の気多大社

 羽咋市の気多大社で16日未明、神前に放ったウミウ「鵜様(うさま)」の動きで新年の吉凶を占う国重要無形民俗文化財「鵜祭(うまつり)」が営まれた。鵜様は約9分間、本殿にたたずみ、40年間神事を見守ってきた関係者は「ここまで動かない鵜様は初めて」と驚いた。昨年はウミウが捕獲できず占いは2年ぶりとなり、「来年は慎重に前へ進むべき」とのお告げが出され、参拝者は新年の平静を祈った。

  ●9分間、微動だにせず

 神事は午前3時に始まり、市内外から訪れた約40人が固唾(かたず)をのんで見守った。鵜様を七尾市鵜浦(うのうら)町から運んだ鵜捕部(うとりべ)との問答で神職が「鵜をその所に放てとのたもう」と告げると、鵜様が入ったかや製のかごが本殿に運ばれた。

 本殿のろうそく一対を残して明かりが消された暗闇の中、放たれた鵜様は周囲を見回しながら立ち止まり、時折「グァ」と鳴く姿もあったが約9分間、微動だにしなかった。神職が前に進むようにお祓(はら)いをすると本殿の左隅に移動した。「案(あん)」と呼ばれる台には飛び乗らなかった。

 40年間神事に臨んできた松尾孝夫名誉宮司は「鵜様がこんなに長く様子をうかがって同じ場所に居座るのは初めて。景気や社会情勢が厳しい時代だが、慎重に進めば明るい一年になるだろう」と読み解いた。

 前回の2021年も「慎重に動くべき」とのお告げが出され、松尾名誉宮司は「鵜様が動くまで2年前の何倍も時間を要した。より一層、細心の注意を払うことが重要」と強調した。

 役目を終えた鵜様は、再びかごに入れられて近くの一ノ宮海岸に運ばれた。かごが開けられると、ここでもしばらく動かず、2分ほどたってから羽をばたつかせて海へ飛び立った。神事を見届けたかほく市の浅木政宏さん(60)は「来年は穏やかな一年にしたい」と話した。

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