白山・鶴来の住宅街にクマ、3人負傷 1頭駆除、もう1頭か

クマが出没し、封鎖した道路に停車するパトカーや消防車=16日午後4時、白山市部入道町

  ●12月に初の人身被害

 16日午前9時53分ごろ、白山市鶴来地域にある安養寺町の住宅の庭で、家人の女性(70)がクマに顔や左腕を引っ掛かれて重傷を負った。午後には同町で男性(75)、近接する桑島町では女性(67)が襲われ軽傷を負った。3人とも命に別条はない。クマは午後5時、民家敷地に逃げ込んだところを猟友会によって駆除された。クマはもう1頭いる可能性がある。石川県内で12月に入ってからのクマの人身被害は初めてで、専門家は冬眠期の出没に暖冬の影響を指摘する。

  ●車庫に閉じ込め

 75歳の男性は午後0時35分ごろ、襲われた。男性は襲われたクマとは別の1頭が自宅車庫に侵入するのを目撃。その後シャッターを閉めて閉じ込めた。白山市は17日に車庫を調べる。

 市によると、駆除されたクマは体長約130センチで、体重80~90キロの成獣。70歳女性は自宅前の倉庫付近で、野菜の仕分けや草むしりをしていた時に襲われた。

 白山署や市などは、襲われた男性の証言と、午後の同じ時間帯にクマの目撃情報が複数あったことなどから2頭いるとみて捜索。午後2時10分には1頭が近接する野々市市上林1丁目の老人福祉施設「百々鶴荘(ももづるそう)」の敷地に侵入。同2時14分には、白山市鶴来桑島町で67歳女性が襲われた。クマは同市部入道町の民家敷地に逃げ込み、カーポート付近に潜んでいたところを駆除された。

 3人が襲われたのは国道157号に近接する鶴来地域の住宅街で、近くに鶴来総合文化会館クレインがある。

 市は、別のクマが出没する可能性があるとして防災メールで注意を呼び掛けている。16日夜も現場周辺を警戒し、17日は目撃情報が多かった場所を中心に猟友会、白山署と巡回する。

 県によると、2005年の統計開始以来、これまで県内では12月の人身被害はなかった。今年、県内では20年11月以来となる人身被害が発生、10月に金沢市の大乗寺丘陵公園で84歳男性、小松市の木場潟公園東園地で60代男性がそれぞれ襲われている。

  ●暖冬が影響、冬眠入り遅れ/県立大・大井教授

 クマの生態に詳しい石川県立大の大井徹教授は、例年なら12月はクマが冬眠に入る時期となるが、今年は気温が高いため冬眠入りが遅れている個体がいると指摘した。

 鶴来地域に出没したクマについて、餌となるカキなどを求めて夜に山を下りるうちに平地までたどり着いたのではないかと推測。「日が昇り、人の姿を見てパニックになって襲い、逃げ道を探す中であちこちで複数人に危害を加えた可能性がある」と話した。

 大井教授によると、クマは12月から翌3月ごろにかけて冬眠する。体内に餌をため込み、冬眠中は仮死状態になる。ただ今年は暖冬の影響で活動を終えていない個体が少なくないとみられる。

 大井教授は、クマは嗅覚が鋭いため、平地に取り残したカキがあると、臭いにつられて人里まで下りてくるとし、「民家敷地のカキは収穫するなど、クマを寄せ付ける要因をなくしてほしい」と呼び掛けた。

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