折れたバットに感謝 日本一の生産地、南砺・福光に供養塔

バットの供養塔の建立を祝う大内社長(前列左)ら関係者=南砺市開発

 日本一の野球の木製バット生産地である南砺市福光地域に、折れたバットを供養する「供養塔」が誕生した。同市開発のバット製造会社エスオースポーツ工業の大内弘社長(82)が「作るだけでなく、感謝する日を年1回は設けたい」と同社敷地内に石碑と祠(ほこら)(建屋)を建立した。16日に関係者10人が出席して神事が行われ、供養塔のお払いと奉納されたバット100本に感謝した。

 供養塔の建設面積は5平方メートルで、総ヒノキ造り。高さ3メートル、幅2.1メートル、奥行き2.5メートル。石碑は小矢部川の石で、平らな部分に大内社長の揮毫で「心」の文字を刻んだ。天井から黄金のバットをつるした。

 大内社長は16歳でバット職人となり、1981(昭和56)年に独立してエスオースポーツ工業を創業した。同社では、過去に阪神タイガースの掛布雅之選手やロッテ、巨人などで活躍した落合博満選手らプロ野球選手のバットを手掛けた。現在は高校、社会人チームの選手へオーダーメードのバットを作る。

 選手から注文を受ける際に折れたバットを預かったり、選手の要望で折れたバットのグリップを記念品に仕上げたりしていた。長年、業界にお世話になった恩返しを考えていた大内社長は供養塔建立を決意した。

 2年前に大工の中居兵九郎さん(74)=同市岩木=に相談し、石碑用の石や建屋用の木材を集め、昨年末に石碑を建立し、今年春に建屋が完成した。オフシーズンで仕事も落ち着き、16日に宇佐八幡宮(同市福光)の石黒希典禰宜(ねぎ)に依頼し、「祠堂(しどう)建立清祓」と名付けた神事を実施した。

 今後、選手の木製バットを預かり、年1回供養の日を設ける計画。バットは供養後に焼却する。大内社長は「バット作りで生活してきた感謝の思いを形にした。人形供養のようにバットにも選手の精魂がこもっており、供養が必要だと思った」と話した。

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