筋書きのないドラマ

 スポーツはよく「筋書きのないドラマ」と形容される。脚本で書けないような劇的な結末、番狂わせがあり、それが見ている人の心を揺さぶる。高校サッカーやラグビー、駅伝をはじめ、そんな名勝負が毎年のように生まれる冬の各種全国大会シーズンが近づいてきた▲例年同様、各都道府県の予選の段階から、多くのドラマが生まれた。県内も各競技で接戦が相次ぎ、予想外の結果が出た試合もあった▲高校サッカーを制したのは長崎総合科学大付高。現3年生は約2年前に他界した名将小嶺忠敏前監督の最後の教え子たちで、チームは恩師が愛用していた麦わら帽子をベンチに飾って大会に臨んだ。決勝で夏のインターハイ3位の国見高を倒して代表権を手にした▲高校ラグビーの決勝は反響を呼んだ。長崎南山高と長崎北陽台高が引き分けて両校優勝となり、抽選で長崎南山高が県代表になった。密室での“くじ引き”を終え、泣きながら部屋を出てきた両校の主将の姿は強く印象に残っている▲発行部数1億2千万部超のバスケットボール漫画「スラムダンク」の作者、井上雄彦さんの言葉がある。「現実の方が面白くてありえないことがたくさん起きている。漫画はそれを超えられない」▲年末年始、そんな現実に挑む選手たちの活躍を心から願っている。(城)

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