郵便局を訪れた客の「還付金」と書かれたメモを見逃さずに詐欺を防いだとして、兵庫県警尼崎東署は尼崎下坂部郵便局の局員岡田芳三さん(53)に署長感謝状を贈った。岡田さんは「少しでも不審に思ったら空振りを恐れず声をかけるのが大切」と話した。
「(銀行口座の)暗証番号を忘れたから教えてほしい」。11月8日午前11時ごろ、80代の女性が落ち着いた様子で訪れた。暗証番号を忘れた高齢者が来局するのは珍しくなく、「通帳と印鑑があれば出金できます」と伝えると、女性は「市役所から還付金が返ってくるのよね」とぽつり。還付金の手続きを装って送金させるのは特殊詐欺のよくある手口で、数週間前にも被害に遭った親子が相談に来た。
岡田さんは詐欺の可能性が高いと判断し、市役所への再確認を勧めたが、女性は「向こうからかかってきたら確認するわ」と乗り気ではない。電話内容を尋ねると、かばんから「還付金、通帳、印鑑」と書かれた紙切れを取り出した。「これがいるって言われて」。詐欺を確信した岡田さんはすぐに110番し、警察官が来るまで女性を引き留めた。
同署によると、「医療費の還付金がある」との電話があり、商業施設で女性はATMを操作。暗証番号を忘れていたため、確認のために郵便局を訪れたという。
翌日、女性は再び郵便局を訪れた。「助かりました」とだけ言い残して、岡田さん宛てに真っ赤なポインセチアの鉢を置いていったという。
5日にあった贈呈式には、同じく水際阻止に貢献した尼崎長洲本通郵便局の局長谷千里さん(60)とともに感謝状を受け取った。岡田さんは「大切な財産を守ることができたのは局員としてうれしい」と笑顔で語った。(池田大介)