八戸満了の相澤ピーターコアミのトライアウト挑戦!2年前のアクシデントからの復活

日本プロサッカー選手会(JPFA)が主催する「JPFAトライアウト」が今月12、13日に開催された。今季契約満了を言い渡されたJリーガー(元Jリーガーも含め)たちがピッチ上でスカウトたちにアピールした。

今季J3ヴァンラーレ八戸満了のGK相澤ピーターコアミ(22)は12日に参加し、11対11のゲームで出足の早いセービング、積極的なコーチングで積極性を見せた。

相澤は「最後の失点はいらなかったと思うんですけど、それまでの7vs7もそうですし、無失点でずっとこれていた。欲してくれるチームがあればいいと思っています」と振り返った。

相澤は2年前の同トライアウトでアクシデントに遭遇した。2021年12月9日の同トライアウトにて味方選手との接触により頭部を強打して、救急搬送された相澤は中心性脊髄損傷の診断を受けた(全治未定)。

「一瞬(意識が)飛びました。一瞬飛んで、倒れて、トレーナーの人が走ってきてくれて、(首を)抑えられたところから覚えています。感覚はなかったし、固定されて『絶対に動いちゃダメ』と言われました。ぶつかった感覚はあるんですけど、なんかもやもやしてるというか。あのときは意識がはっきりしてたんですけど、ぶつかった瞬間はちょっとぼやけて朦朧(もうろう)とした。首を抑えられているときは、意識ははっきりしてるんだけど、上半身の感覚がなかった。自分でも自分の体じゃないみたいな状態で、本当に先が見えない状態というかそういう状況でした」と状況を振り返った。

九死に一生を体験した相澤はプレー復帰をするまでに約3カ月半を要したという。それまでの治療期間は不安との闘いだった。

恐怖との闘い

接触プレーにより中心性脊髄損傷を受けた相澤は「どんなケガをしたかのか。自分の中でそのときは分からなかった。痛みの度合い、実際上半身は麻痺していた。それを考えたときに、『これずっと動かないのかな』と思っていました」と負傷直後は恐怖が襲いかかった。

精密検査を受けて医師から治るといわれたときは涙を流したという相澤は「親にはちょっと心配ばかりかけて申し訳ないです。でも正直その言われたときも信じられなかったというか。麻痺の度合いもアレだったし、『ここから治るの?』という兆しが分からなかったです」と不安を抱えていた。

病院生活では約1週間首を固定した状態でベッドから起き上がれない状態が続いた。食事も点滴での栄養摂取ときびしい環境だったが、友人の気遣いがありがたかったと振り返る。

「3日4日した時に手が動くようになりました。僕の家から1時間半ぐらいのところに住んでる友達がいて、その友達が首を動かさなくてもいいように携帯電話の車に止めるやつあるじゃないですか。あれを買って差し入れしてくれて。そういうものがあったから(スマホでYouTubeなどを)見られました」と笑顔で明かした。

負傷から1カ月後に退院してから首を固定する時期がしばらく続き、2022年2月のプレー再開時も首を固定していたという。「正直、怖さはめっちゃあります。でも自分にとってサッカーをできないことのほうが怖かった。だったらもう行くしかないみたいな感じでもう勢いでやっています(笑)」と、持ち前の気持ちの強さでプレーを続けた。

リハビリを続けて奮闘した相澤に吉報が届いた。「退院した後はチームはなにもなかったんですけど、病院や千葉の人たちが協力してくれて一緒にリハビリして千葉の練習に参加できるようになりました。そのときにラインメール青森から話をもらって、自分の中では迷いもありつつ(チームが)欲してくれていた。なにかの縁だと思ってそこからラインメールで1年間いさせてもらいました。ラインメールとヴァンラーレが練習試合することが多くて、今年のキーパーコーチが『獲りたい』と言ってくれて、八戸に決まりました」と青森、八戸内定を振り返った。

後悔はない

今季は八戸でリーグ戦出場ゼロ試合と苦しい時期を過ごした。契約満了を言い渡されて、JPFAトライアウトに参加する運びとなった。

「(トライアウトを受ける怖さは)ありました。正直なんというか、フラッシュバックするのかなと思ったんですけど、意外と楽しめました。だからそれこそゲームが始まる前に、『僕は前回2分ぐらいにケガしたんで。みんなケガなくいきましょう』と言って始めたので(笑)。『3分持ちましょう』みたいな感じで他の選手も言ってくれて。逆にそういう感じでみんなもノッてくれたからチーム全体となって勝てたし、僕もできた」と強い気持ちでトラウマを克服するように躍動した。

あのアクシデントは人生を変える経験だったかもしれない。ただ相澤に後悔という文字は脳裏にない。

「後悔はないですね。もともと自分のキャッチミスから始まりました。そこで自分の技術が足りなかったからなったと自分でも分かっている。逆にそこに拘るきっかけにもなったというか、いまこうしてサッカーができている。そういう後に生かせる状態にまで持ってこれた。いまとなって後悔はないです」と言葉に力を込めた。

このトライアウトでは力むことなく、のびのびとしたプレーを終始披露した。どこか腫れ物が落ちたような顔立ちが印象的だった。

トライアウトを終えた相澤は「試合に出られなくて満了にはなったんですけど、1年間で積み上げてきたことに対して僕は自信を持っています。トライアウトでもどこかチームが拾ってくれるだろうといまでも思っています。

もちろん上でやりたい気持ちはあるし、上でできる自信もある。上にチャレンジして自分の力がどれだけ通用するのかを見てみたい。カテゴリーを落としてプレーしたとしても、上には戻ってきたいです。これからどこへ行ってもやれる自信があるのでサッカー続けようと思っています」と充実した表情をのぞかせた。

【インタビュー】大ケガからの契約満了、名刺を配ったトライアウト、J3八戸MF山田尚幸が逆境を乗り越えて成し遂げた偉業とは

大きなアクシデントを見舞われたが、強い気持ちでトラウマを克服した相澤は前回のトライアウトよりも一回り大きくなって成長した姿を見せた。今後どのようなキャリアを歩むのか。恐怖を乗り越えた守護神の動向を追っていきたい。

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