12月にもクマ被害 警戒強める那須地域 活動時期、長期化の可能性

8月末、塩原地区で撮影されたクマ(那須塩原市提供)

 11月以降、栃木県那須地域でクマの被害が相次いでいる。那須町では観光客が犬の散歩中にクマに襲われ、那須塩原市では今月に入り、民家への侵入事案が発生。いずれも大きな被害には至らなかったが、専門家はクマの活動範囲が広がり、活動時期も長期化している可能性を指摘する。冬眠前のクマは一段と食べ物に執着するとされるだけに、両市町の担当者は「クマの餌となるごみなどを外に出しておかないで」と警戒を呼びかけている。

 同市内では12月11日、民家にクマが侵入し、台所のごみをあさる被害があった。人が住む住宅にクマが侵入したのは、この3年ほどはなかった。その1週間前には、玄関ドアが壊される被害が近隣で起きていた。

 本年度、同市には約30件のクマ目撃情報が寄せられた。市の担当者によると例年並みだが、目撃時期が長引いており、例年なら目撃情報がなくなる11月以降も続いた。塩原温泉ビジターセンターの細井康弘(ほそいやすひろ)さん(48)は「近年1月から2月でも山に入ると、クマの足跡を見る。冬眠しないクマが増えているのでは」と推測する。

 11月に観光客が散歩中、クマに襲われた那須町。本年度は39件の目撃情報が寄せられた。昨年度17件の2倍以上で、昨年度は目撃のなかった10月以降にも数回、目撃されている。

 同市ではクマの目撃や被害のあった場所を職員と地元猟友会メンバーが訪れ、住民に対策を呼びかけている。捕獲するのは、住宅地に頻繁に姿を見せ、人命に関わると判断した場合や農作物に甚大な被害が出ている場合に限っている。市の担当者は「すみ分けできることが理想。寄せ付けないことが一番の対策になる」と捕獲が苦肉の策であることをにじませた。町は広報活動や情報を猟友会に伝え、対応を行っている。

 目撃が長期化している理由について、県立博物館学芸部自然課小笠原佑(おがさわらゆう)さん(36)は、餌となるブナなどのドングリが不十分で、冬眠までに必要な栄養が蓄えられていないことなどが考えられると指摘する。

 同市は今後クマが住宅地に出没した際、住人の避難方法などの対策を検討する方針。同町は県と共同で注意喚起を続けていくとしている。

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