レトロ感満載、交流の場完成 鹿沼・国文化財の石蔵 民間提案制度で修復と改装

コンサートが開かれたイベントスペース

 【鹿沼】睦町の市文化活動交流館に隣接する国登録有形文化財の石蔵について、下日向(しもひなた)の設計事務所「アーリス」が手がける改修工事がこのほどおおむね終了した。深岩石(ふかいわいし)や大谷石の重厚な趣を残しつつ耐震補強を施し、レトロ感のあるイベントスペース「シカノクラ」として生まれ変わった。10日にはとちぎ未来大使の大野紘平(おおのこうへい)さんのピアノコンサートが行われ、軽快なタッチから生まれる豊かな音色が石蔵に響いた。

 石蔵は大正初期に建設され、かつて製麻工場が使用していた。壁は市内で産出された深岩石や大谷石で造られており、1998年に市へ寄贈され2014年に国の文化財指定を受けた。

 その後、市は物品倉庫として使用していたが、雨漏りなどの老朽化がひどく、「歴史ある建造物が朽ち果てていくのは忍びなかった」とアーリスの小西勝(こにしまさる)社長。19年冬、同社は市公共施設等民間提案制度による修復と活用の計画書を提出し、改修に取り組んできた。

 石蔵内は3ブロックに分かれ、延べ床面積は約500平方メートル。北ブロックはバーカウンターを備えたカフェスペース、中央ブロックはパーティーや講演会などが開催可能なイベントスペースとして整備した。

 屋根の銅板や壁面は可能な限り生かしつつ新たに出入り口を数カ所設け、正面入り口には外気の流入などを緩和する風除室を設けた。高窓にステンドグラス、天井にはシャンデリアを配し、新たなパーツを使った部分はエイジング加工を施すなど全体的な調和を保つ工夫も凝らした。

 10日のコンサートには聴衆約150人が来場。欧州のダンスホールのようなムードの中、響くピアノの音色に聞き入った。大野さんは「音の広がりも良く、コンサートホールのよう」と称賛。現在は試験的に同社が選定したイベントに限定して無償提供しており、これまで立食パーティーや会合などでの利用実績があるという。

 物販エリアとして活用する南ブロックを含めたフルオープンは来年4月の予定。今後は結婚式や2次会などの個人利用のほか、隣接する芝生広場を活用したマルシェなど他団体と連携したイベントなどの活用も視野に入れる。小西社長は「県内には他にないような趣ある雰囲気に仕上がった。非日常の空間を楽しんでもらえれば」と話している。

バーカウンターやバックヤードにキッチンスペースがあるカフェスペース

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