「こどもホスピス」岩手に設立目指す 盛岡の母親中心に準備委

「いつも笑顔で心の優しい子だった」と丈ちゃんとの思い出に触れる工藤裕之さん(左)と美穂さん夫妻。こどもホスピスの設立に向けて立ち上がった=盛岡市上田

 命に関わる重い病気と闘う子どもと、その家族を支援する施設「こどもホスピス」の設立を目指す動きが岩手県で始まっている。病気で幼い子どもを亡くした盛岡市の母親を中心に準備委員会が発足された。全国的にも施設はわずかで、運営費や拠点確保といった課題は少なくない。それでも、一家が穏やかに過ごせる場の具現化に向けアクセルを踏み込む。

 「これは公園で撮ったね」「スパイダーマン大好きだったな」。盛岡市上田の工藤裕之さん(42)、美穂さん(49)夫妻の家には、4歳で亡くなった長男丈(じょう)ちゃんとの思い出が詰まったおもちゃや写真などが並ぶ。

 2022年3月、丈ちゃんに心疾患が見つかった。体調を崩して病院に行ったが風邪の診断が続いた。入院して検査をすると、心臓移植が必要な病気と分かった。そのわずか2カ月後、天空に旅立った。

 失意の中、美穂さんは福井県でこどもホスピス設立に向けて奮闘する女性に出会った。女性も幼い息子を失い、ドイツでこどもホスピスを利用した経験を原動力に変えた。

 女性と交流を深めるうちに、少しずつ前を向けるようになった美穂さん。「岩手でも誰にも聞けない、話せない思いを抱える人が話せる場をつくりたい」と考え、裕之さんや看護師らと「いわてこどもホスピス設立準備委員会」を先月に立ち上げた。

 活動の第一歩として11月下旬、同市の材木町よ市で盛岡産ふじを使った「アップルジューススタンド」を行った。1杯300円で販売し、収益の一部を活動資金に充てるもので、18リットルが1時間半ほどで完売。趣旨に賛同した人たちから善意が寄せられた。

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 いわてこどもホスピス設立準備委員会は、協力を募りながらアップルジューススタンドを継続する。問い合わせは美穂さんの携帯電話(090.2994.8028)またはメール(iwatekodomohospice@gmail.com)へ。

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