秋まで株価が大躍進のラーメン株、御三家の順位に変動。業績は好調なのに株価が下げ止まらない原因とは?

ここのところ街に出るとあちらこちらで行列ができています。コロナ前によく見た風景が、ふたたび戻ってきた感じです。とくに目立つのはラーメン屋さん。原宿にある某有名ラーメン屋さんの前には、お昼をだいぶ過ぎたアイドルタイムに軽く30人以上が並んでいました。並んでいるのは、アジア圏からの旅行者が多く、インバウンドの恩恵をしっかり受けているようです。

ラーメン系企業については、8月にアップした記事「株価が大躍進したラーメン株、御三家に伸び代はまだあるのか?」で取り上げています。2022年からラーメン銘柄は好調で、2023年の8月時点ではかなり株価も上昇していたのですが、ここからまだ株価が伸びるのか? 8月に公開した記事では「ラーメンが伸びるのは困りますが、株価はまだまだ伸びてほしいですね」とドヤ顔で締め括っています。実際その後はどうなったのでしょう?


8月と現在の株価を比較

画像:TradingViewより

御三家として取り上げたのは、力の源HD、丸千代山岡家、ギフトHDの3社。8月時点で直近1年間の株価騰落率を比べた結果は、1位力の源HD(240%)、2位丸千代山岡家(200%)、ギフトHD(70%)でした。日経平均株価は18%程度ですので、指数に比べれば3社ともかなり株価が上昇していたことが分かります。

4ヶ月後の現在の株価比較は下記のとおり。

画像:TradingViewより

力の源HDと丸千代山岡家の順位が入れ替わり、ギフトHDはあまり変わらずといったところ。この4ヶ月の間に決算発表がありましたので、その影響が株価にも反映されています。9月以降、株価が下落し続けている力の源HDから見ていきましょう。

力の源HD、好決算でも株価の下落が続く

画像:力の源ホールディングス「2024年3月期第2四半期決算短信〔日本基準〕(連結)

2023年11月14日に発表された2024年3月期第2四半期決算は、①売上高14,879(百万円)②前年同期比+27.3%、③営業利益1,350(百万円)、④前年同期比+68.9%、同時に通期予想の売上高を11.1%、営業利益を22%、上方修正しています。修正の理由としては、インバウンドによる人流回復や、円安が挙げられています。当社は海外進出を積極的に行っていますので、円安メリットが大きいことが分かります。

文句なしの好決算なので、翌日株価は5.1%上昇しましたが、その勢いは続かず、その後さらに下落が続いています。

見えている業績は好調なのに株価が下げ止まらない原因は、為替にあると思います。折しも、当社が決算発表を行なった前日11月13日に、1ドル151.92円の高値をつけており、現在は140円台前半までドル安円高となっています。当社の業績に寄与していた円安効果が薄れることを予想して、株を手放す人が増えているのでしょう。

丸千代山岡家は営業利益が大幅増額

では、1位に踊り出た丸千代山岡家の決算はどうでしょう?

画像:丸千代山岡家「2024年1月期 第3四半期決算短信〔日本基準〕(非連結)

2023年12月11日に発表された2024年1月期第3四半期決算は、①売上高18,686(百万円)②前年同期比+42.5%、③営業利益1,349百万円)、④前年同期比+310.4%。当社も同時に通期予想の上方修正を発表しております。ここで目を引くのは、売上高の修正率が4.1%であるのに対し、営業利益は80%の大幅増額です。当然、これによって営業利益率は4%から7%に一気に改善されています。

画像:丸千代山岡家「2024年1月期通期業績予想の修正に関するお知らせ

修正理由は、10月に価格改定を行なったことが挙げられています。値上げによる客離れが気になるところですが、既存店の10月の客数は前年比128.7%で、前月9月の126.1%からむしろ増加しています。さらに11月は130%ですから、値上げのダメージは皆無と言ってよいでしょう。直近の3ヶ月8-10月だけを取り出したときの営業利益率は12.3%とラーメン店の利益率としては驚異的な数字になっています。

画像:丸千代山岡家「2024年1月期11月度売上高速報及び概況等について

当然、株式市場はこれを評価し、翌日の株価は22.6%上昇。決算発表前日の株価2,810円から約1週間で3,935円(12月19日時点)と1,000円以上高いところへジャンプアップしています。海外に目を向けていた力の源HDと真逆で、徹底的にドメスティックにこだわった当社に軍配が上がりました。

ギフトHD、株価は動かないものの業績は好調

さて、最後に、株価が4ヶ月前からあまり動いていないギフトHDも見てみましょう。

画像:ギフトホールディングス「2023年10月期 決算短信〔日本基準〕(連結)

2023年12月15日に発表された2023年10月期決算は、①売上高22,982(百万円)②前年同期比+35.1%、③営業利益2,352(百万円)、④前年同期比+49.7%。売上高も営業利益も予想値よりも10%以上高く着地しています。

画像:ギフトホールディングス「2023年10月期 決算短信〔日本基準〕(連結)

注目の新年度予想は、①売上高27,600(百万円)②前年同期比+20.1%、③営業利益2,700(百万円)、④前年同期比+14.8%と引き続き二桁増収増益で、過去最高を更新予想です。

3社のうち当社だけが経常利益が前年比でマイナスとなっていますが、これは前年度に計上した補助金収入によるものなので特殊事情と考えてよいでしょう。また、ギフトHDも海外展開していますが、店舗数が19店舗(日本国内745店舗)と少ないため、為替の影響は軽微です。新年度も好調と確認できたことで、決算発表翌日は10%上昇しており、騰落率はほか2社から遅れをとっていますが、ここから追い上げることも期待できそうです。

株価の割安さを表すPERを比べると、力の源HDは19.3倍、丸千代山岡家は16.7倍、ギフトHDは26.1倍と、株価の騰落率がもっとも高い丸千代山岡家がいちばん割安です。時価総額で見てもほか2社は400億円台であるのに対し、丸千代山岡家は200億円未満と半分以下。となると、まだまだ伸び代があるのは、丸千代山岡家と考えられそうです。

ただし、個人的な味の好みはギフトHDの横浜家系ラーメン「町田商店」です。消費者としてはギフトHD、投資家としては丸千代山岡家と、当面は二股をかけることになりそうです。

※本記事は投資助言や個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。

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