「危機的状況」陸奥湾のホタテ稚貝、5割死ぬ 猛暑影響、過去2番目の被害 全滅の地域も

 青森県は21日、今夏の猛暑による高水温の影響で大量死が報告されていた陸奥湾養殖ホタテガイについて、被害状況をまとめた秋季実態調査の結果を発表した。ホタテの死んだ割合を示す「へい死率」は今年春に生まれた稚貝が52.5%、来年以降親貝となる新貝が36.5%だった。稚貝、新貝とも7割が死滅した2010年を下回ったものの、稚貝が過去2番目、新貝は同3番目に高い被害で「危機的な状況」となった。

 被害は地域差が見られ、全滅した地域もあった。生産量が多い平内町漁協のへい死率は稚貝が61.3%、新貝が47.8%。原別、造道支所エリアが全滅となった青森市漁協では稚貝が90.3%、新貝が83.4%だった。新貝は青森市から野辺地町にかけて、稚貝は外ケ浜町から野辺地町にかけてへい死率が高かった。

 被害に地域差が出た要因について、県は、深い漁場のある地域では養殖施設を海水温が低い深部まで沈められたが、漁場の浅い地域では深く沈められず、高水温被害を防げなかったとみている。今夏はホタテの成長に影響を及ぼすとされる海水温23度以上の期間が71日となり、過去最長だった。

 湾内全体のホタテ保有枚数は、稚貝が8億7404万枚で、過去10年平均の57%。親貝となる成貝と新貝の保有枚数は合計7115万枚となり、稚貝を安定的に確保できる枚数の目安である1億4千万枚の51%にとどまり、来年以降の水揚げへの影響は避けられない見通し。

 県は今後、全庁横断的な情報連絡会議を設置、来年1月中に被害額を算定し漁業者の資金調達を支援する「県農林漁業災害経営資金融通助成条例」を発動させる。

 宮下宗一郎知事は報道陣の取材に「被害にばらつきはあるが、非常に危機的な状況。ホタテ産業は裾野が広く、連鎖的に県内経済を直撃する恐れがある。漁業者の意見を聞きながら対応していきたい」と話した。

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