「野辺地経済の起爆剤に」簡易宿所を2024年1月開設、飲食店も視野 不動産コンサル企業が拠点

野辺地町内に開設した営業所。左から2人目が田中さん、同3人目が熊谷さん
来年1月にオープンする簡易宿所の内部=15日、野辺地町松ノ木

 不動産総合コンサルティング業の「東京不動産バンク」(東京都豊島区)が2024年1月、原子力関連施設の工事作業員向けの簡易宿所を青森県野辺地町に開設する。町出身者らが立ち上げた同社は21年に営業所を町内に構え、今年4月から同町での事業を本格稼働させた。施設が集積する六ケ所村に近く、飲食店やスーパーがあるなど利便性の高さに商機を見いだし、今後は飲食店の開店も視野に入れており、「野辺地の経済の起爆剤になれるよう貢献したい」と意気込んでいる。

 9部屋を備える簡易宿所は、野辺地高校近くにある生徒向けの下宿だった建物を買い取り、リフォームしたもの。同町出身で同社事業統括部長の熊谷春男さん(46)は「六ケ所村にはこの先30~50年は(施設関連の)作業員が入ってくるだろう」と分析する。

 その上で「作業員の宿泊施設は不足しており、中には、十和田市から六ケ所に通っている人もいる。野辺地は土地も安く、費用対効果が抜群。地元の経済を回したい」と強調した。

 同社は、現在社長を務めている田中陽子さん(44)と、首都圏の不動産事業に20年以上携わってきた熊谷さんが20年に設立。不動産のコンサルティング・売買・賃貸の仲介などを手がけ、年間売上高は約7千万円。社員は7人。

 野辺地営業所の責任者も務める熊谷さんは、野辺地高卒業後に上京。25歳から不動産業に関わってきた。「当時は地元に戻るつもりはなかった」という。

 帰省の際、町内の宿泊施設やアパートが六ケ所村で働く作業員で埋まっているのを知り「事業環境が素晴らしい」と考えた。かつてにぎわった町中心部が衰退していることに寂しさも感じていた。ある日、野辺地で漁師をしている同級生に「東京でホタテを売ってほしい」と依頼を受けたのを機に、「ふるさとの活性化を手伝いたい」と考えるようになったという。

 営業所開設後は野辺地と東京を行き来していたが、昨年12月からは、町にほぼ常駐。今年4月に地元で所員2人を採用後、不動産管理・コンサルティングと水産事業に加えてITメディア事業を始め、動画による企業PRも手がけるようになった。

 地元に残る若者を応援したいといい、新年度に新規高卒者を地元で採用する予定。熊谷さんは「野辺地を発信し、活性化させる力となりたい」、田中さんは「地元の若者を採用することで、徐々に活動の幅が広がってきている」とそれぞれ語った。

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