社説:ヤングケアラー 支援届く体制が欠かせない

 子どもが負担や悩みを抱え込まないよう、社会全体で支える仕組みを整えねばならない。

 大人に代わって日常的に家事や家族の世話をするヤングケアラーの支援について、初めて法制化する案をこども家庭庁が示した。国や自治体の支援対象と位置付けることで、対応の格差解消につなげるという。

 対象を成人した若者にも広げ、家事や世話が大人になって続く場合も支援が途絶えないようにする。子ども・若者育成支援推進法に明文化し、年明けの通常国会に改正法案の提出を目指すとしている。

 ヤングケアラー支援はこれまで法律に明確な定義がなく、自治体の対策の遅れが目立っていた。行政の踏み込んだ支援につなげてほしい。

 病気や障害のある親や祖父母、幼いきょうだいを世話するヤングケアラーの数は、国が2021~22年に公表した調査結果で初めて浮かび上がった。

 「世話をしている家族がいる」と答えたのは、小学6年の6.5%(約15人に1人)、中学2年の5.7%(約17人に1人)、高校2年の4.1%(約24人に1人)。クラスに1~2人いることになる。身近な問題と認識したい。

 国は地域別の調査を求めているが、実施済みは今年2月末時点で258自治体にとどまる。

 京都市の調べでは中学生の5.4%、高校生の3.5%だった。ひとり親家庭を対象にした京都府の調査(京都市除く)では、回答した約2千世帯の1割にいることが分かった。滋賀県は590人おり、県内全小中学校の4割超に在籍するという。

 これらの調査では、子どもたちから「相談した経験がない」との声が上がり、学校からは「介入するのが難しい」との意見も寄せられた。子ども自身では自覚しにくい難しさもあり、いかに悩みを拾えるかが課題といえよう。

 支援は試行錯誤が続く。京都市は今年9月から訪問支援員を派遣して家事を援助する事業を実証実験として始め、現在2件の利用があるという。

 京滋ではNPOなど民間団体も実態の把握や支援に取り組んでおり、行政との連携強化が欠かせない。

 自治体では20年に埼玉県がケアラー支援の条例を施行し、各地で広がりつつある。法制化をきっかけに、京滋でも積極的に検討を進めてもらいたい。

 児童福祉の現場では、増加が続く虐待対応を中心に人手不足が深刻で、新たな財源や要員の確保は容易ではない。

 しかし、ヤングケアラー問題は本人の進学や就職、結婚といった人生の選択肢を狭めかねない切実な問題である。

 国と自治体は教育や医療、介護などさまざまな安全網を強め、支援が確実に届く体制を構築するべきだ。

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