「足利市の神社仏閣数は全国1位」って本当? うわさの真相調査してみた 栃木県の順位は

足利織姫神社

 「足利は市内の神社仏閣の数が全国1位といううわさを聞いたことがある。真偽の程を調べてほしい」という声が下野新聞「あなた発 とちぎ特命取材班」(あなとち)に届いた。確かに足利市には、足利織姫神社や鑁阿(ばんな)寺などがあり、神社仏閣が多いイメージがある。うわさの真相に迫った。

 神社や仏閣を含む、宗教施設の数をとりまとめたデータはあるのだろうか。宗教法人の設立や合併、解散の認証を所管する県文書学事課に問い合わせてみた。宗教施設数の統計はなかったが、宗教法人数のデータが目安になるという。担当者は「基本的に1法人ごとに一つの神社や仏閣などの建造物を持っていると捉えてよい」と教えてくれた。完璧な数字ではないが、傾向は把握できそうだ。

 提供してもらったのは、現時点で最新となる2023年4月1日時点の宗教法人総括表。全ての宗教法人のうち、神社仏閣を持っているとみられる神道系と仏教系に絞って比べると、最も法人数が多かったのは栃木市で348法人だった。次点は宇都宮市で301法人。足利市は295法人で、両市に続く3位だった。

 残念ながら、足利市は県内1位ではないが、県内上位であることは間違いない。仮に栃木県が全国でも有数の“神社仏閣県”ならば、「全国1位」といううわさが立ってもおかしくない。そこで文化庁の宗教年鑑をひもといた。法人格の有無にかかわらず、宗教団体の数が都道府県別で集計されている統計資料だ。

 最新の2022度年版によると、栃木県は3362団体で全国27位。全国でも中位だった。ちなみに1位は愛知県で1万805団体。意外にも神社仏閣が多そうな京都府でも10位(6618団体)だった。

 全国データからも、「足利市が1位」といううわさの出所の痕跡を探り当てることはできなかった。宗教学が専門の国学院大神道文化学部の石井研士(いしいけんじ)教授に尋ねてみると、やはり、足利市の神社仏閣数は全国的に多いとはいえないそうだ。

 それでも、栃木県内では3番目に神社や仏閣が多いとみられ、歴史と文化の薫りが高い都市であることは間違いない。全国的には、人口減少で檀家(だんか)や氏子の数が減り、施設の維持管理に苦慮する宗教団体も少なくないという。石井教授は「足利市は、足利氏の氏寺である鑁阿寺があり、神社仏閣が観光資源として機能していることが大きい」と分析してくれた。

 疑問を寄せてくれた足利市助戸仲町、会社員宮澤誠(みやざわまこと)さん(54)に結果を伝えると、「街なかに神社仏閣が多いのでうわさは本当かと思っていた。でも結果を知れて良かった」と話していた。

鑁阿寺

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