宇都宮、ミカン支出日本一なぜ? “量より品質”の地域シェア

ミカン支出金額都市別ランキング

 冬の風物詩といえば「こたつでミカン」。寒い時期に特に食べたくなる国民的果実の消費動向をひもとくと、実は宇都宮市の支出額が全国1位だった。市場関係者に話を聞くと、量より品質にこだわる市民性が見えてきた。

 総務省家計調査では、さまざまな品目について、2人以上の世帯がどれくらい支出しているか統計をまとめている。地方別では、都道府県庁所在地と政令指定都市の計52市区についてランキングを作成している。

 最新の2020~22年平均をまとめたデータで、宇都宮市のミカン支出金額は、5483円で全国トップだった。全国平均を1200円も上回っている。前回の19~21年の調査でも4位(5135円)に入るなど、全国上位の常連だ。

 どうして宇都宮市民はミカンにお金をかけるのか。他の都市の傾向と比較した。20~22年の2位は、生産日本一を誇る和歌山県の県都・和歌山市(5402円)。ほかの果物の支出金額をみても、ブドウは甲府市、リンゴは青森市など生産日本一の都道府県にある都市が1位となるケースは多い。宇都宮市はミカンの産地ではない。謎は深まる。

 答えを求め、市場関係者を訪ねてみた。県内大手の青果卸売会社「東一宇都宮青果」で長年ミカンを担当してきた果実部顧問の石崎昭夫(いしざきあきお)さん(68)は開口一番、「宇都宮といえばミカンだよ。産地でないのに支出が1位なのはすごい」と教えてくれた。

 石崎さんによると、宇都宮市中央卸売市場で取り扱うミカンの7~8割は和歌山県産。特に市内で消費量が多い「有田みかん」は、全国各地の市場の中でも販売量や金額はトップクラスだという。

 その有田みかんの中でも和歌山県有田川町賢(かしこ)地区などで生産されるブランド「マル賢みかん」は、宇都宮市と宮城県石巻市の2市場だけに出荷されているという。「品質にこだわった商品のシェアが高いことが、支出金額の多さにつながっている」というのが石崎さんの見方だ。

 事実、家計調査でも、宇都宮市では高い支出額の半面、購入数量はそれほど多くないことが分かる。20~22年平均では1万158グラム(約10キログラム)で、全国15位。全国平均の9379グラム(約9.4キログラム)はやや上回る程度だ。少々値が張ってもおいしいミカンを求める市民性が浮かび上がる。

 視察などでよく訪れる和歌山県は「第2の故郷」という石崎さん。「高品質で本当においしいミカンを県民に食べてもらうため、長年和歌山のミカンに力を入れてきた。地域でシェアが高いのは誇らしい」と相好を崩した。

 石崎さんによると、今年のミカンは雨が少なかったため大きさはやや小ぶりだが、その分味が凝縮されているという。「糖度は今までになく高く、どれを食べてもおいしい」と太鼓判を押した。

 まだまだ、寒い冬は続く。おいしいミカンはビタミンCなど栄養も豊富。高品質を味わえる環境に感謝しながら味わい、冬を乗り切りたい。

宇都宮市中央卸売市場など2市場にしか出荷されていない「マル賢みかん」
宇都宮市中央卸売市場で取扱量が全国トップクラスの「有田みかん」

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