官民でデータ活用 富山市中心部のAIカメラ

まちなかに設置されたAIカメラ=富山市総曲輪

  ●大手モールの実験検証

 富山市がAI(人工知能)カメラを使って富山駅周辺と中心商店街エリアの歩行者通行量などを調べる取り組みで、データ活用の動きが官民に広がっている。市は大手モールで、歩行者と路面電車のみが通行できる「トランジットモール」の社会実験の効果を検証。民間では通行人の年代などの傾向を屋外イベントの企画に生かす事例があった。市は官民の活用をさらに推進し、地域のにぎわい創出につなげたい考えだ。

 AIカメラは富山駅と中心商店街周辺の28カ所に計52台設置されている。今年度当初からAIが歩行者を識別し、通行量や性別、年代、移動の方向、滞留時間などの情報を記録。市は日や時間ごとのデータなどをホームページ(HP)で公表している。天気や気温も表示し、特定の条件での比較や過去からの推移なども調べられる。

  ●来場1.8倍を確認

 市はAIカメラを使い、大手モールで地元事業者らが中心となって行う「越中大手市場」の9、11月の通常開催と、10月のトランジットモール形式を比較。トランジットモールでは歩行者通行量が約1.8倍に増えたことを確認した。

 市によると、これまでトランジットモールの来場者数は会場に人員を配置して計測し、通常開催時との比較はしていなかった。担当者は「社会実験によるにぎわい創出の効果をより明確に測ることができた」と話し、今後の取り組みの検討に役立てるとした。

  ●牛乳3000本ロスなく

 市などが6月、富山駅構内で牛乳の消費拡大を図った事業では、過去の通行量をみて無料配布する本数を決め、約3千本を時間内にロスなく配りきった。事業の担当者は「初めての試みで何本配布できるか想定しにくく、データを参考にした」と説明。省力化や、混雑する時間帯の回避にもつながったという。

 市によると、駅前広場を会場とした民間のイベントでも、過去数週間分の通行量や人の流れ、性別、年代のデータを活用して出店レイアウトを決めた事例があった。

 データはHPで誰でも見られるため、市が把握していない活用事例もあるとみられる。市は富山駅周辺と中心商店街の企業、店舗にアンケート調査を行っており、活用したことがあるか、今後どう活用したいかなどを聞き、取り組みの周知と事例収集を進める。

 市は公開しているデータが事業者の新規出店や販売戦略の検討などにも役立つと想定している。担当者は「便利な機能をより生かす方法を考えていく。地域の稼ぐ力を高める一助となればいい」と話した。

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