レトロで温か、木の駅名看板 大工の鈴木さん(寒河江)作製、長男働く銚子電鉄(千葉)応援

君ヶ浜駅の駅名看板を作製した鈴木一男さん=大江町・鈴木建築

 大江町に大工業の作業場を構える鈴木一男さん(73)=寒河江市高屋=は千葉県銚子市のローカル鉄道「銚子電鉄」の駅名看板の作製を担っている。「自分の技術で頑張るローカル線の役に立ちたい」と、今夏は4駅目となる君ケ浜駅の看板も手がけた。新しい看板は今月22日に駅に設置され、利用客の目を楽しませている。

 鈴木さんは17歳から大工として働き、家屋のほか、みこしや和太鼓も作製してきた。看板作製は2018年に、銚子電鉄で働く長男の一成さん(44)からの依頼を受けて始めた。これまで関東最東端の海鹿島駅などの看板を作っている。

 同鉄道駅の従来の看板は金属製がほとんどで、設置から時間が経過している。潮風にさらされるなどして腐食したほか、表面の文字も剥がれて駅名が見えにくくなっていた。一成さんは本銚子駅の駅舎改修に伴い、「ローカル線らしいレトロな雰囲気を演出する看板を作れないか」と一男さんにお願いをし、第一号の看板が誕生した。

 一男さんは、その後も定期的に依頼を受けて作り続けた。今夏に作製した君ケ浜駅の看板は腐れにくいケヤキを使用した。大きさは縦60センチ、横92センチ。一成さんが作った原寸大の設計図を基に、一男さんが駅名を丁寧に彫り、墨汁で染めた。

 木の温かさを感じるデザインを意識し、2カ月ほどで仕上げた。来年は5駅目となる西海鹿島駅の看板作製に取り組む予定。

 一成さんは「父が作った看板のおかげで駅舎の見栄えが良くなった。多くの利用客が交流サイト(SNS)で発信してくれている」と効果を実感している。依頼先を悩んでいたところ、気軽に引き受けてくれ「地元山形から応援してくれて、感謝の気持ちでいっぱい」と話す。

 一男さんは「腕を振るって作った。利用客が目にするのは一瞬かもしれないが、少しでも良いと感じてくれたらうれしい」と遠く離れた銚子の地へ願いを込めていた。

© 株式会社山形新聞社