女性の人力車、金沢に登場 県内初、Uターンの上野さん

人力車で観光地を案内する上野さん(左)=金沢市内

 コロナ禍が明け、にぎわいが戻った金沢の観光地で人力車を引く女性がいる。金沢市内在住の上野蓮華(れんか)さん(30)。県内初の女性車夫である上野さんは2022年4月、千葉から地元金沢へUターンし、金沢観光人力車「浪漫(ろまん)屋」に就職。体力やスピードは男性に及ばないものの、持ち前の笑顔と明るさで観光客の人気は高く、本人は「『また金沢に来たい』と思ってもらえるように思い出作りをお手伝いしたい」と意気込んでいる。

 金沢生まれの上野さんは、鶴来高を2年で中退後、市内の飲食店や衣料品店などで勤務。その後、福井市のホテルを経て2018年から関東のテーマパークでガイドとして働いたが、「住み慣れた金沢に戻りたい」との思いからUターンを決意した。

  ●夫の勧め

 金沢での仕事を探していた際、人力車の車夫を提案したのは夫裕輔さん(35)だった。「ガイドの経験を生かせるのでは」と勧められた上野さんは、もともと接客業が好きだったこともあり、浪漫屋に入社することにした。

 上野さんは週5日ほど勤務し、ひがし茶屋街や主計(かずえ)町(まち)茶屋街、金沢城公園などを巡る15分~2時間のコースを案内している。多い日は10組ほどを担当することもあるという。

 浪漫屋によると、女性車夫は東京、岐阜など他地域でも増えているが、金沢は坂が多いため体力が求められる。それでも上野さんは「しんどい顔をしたらお客さんが楽しめない」と接客中は笑顔を絶やさない。

  ●体力の限り

 観光の足としての役割はもちろん、ガイドとしても役に立ちたいと仕事の合間を縫って金沢の歴史について勉強する。知識を身につけ、利用者に紹介するたびに「自分が学ぶほどお客さんが街を楽しめる」と実感。話術も徐々に磨かれ、今ではユーモアたっぷりのガイドで乗客を魅了している。

 上野さんは体力が続く限り仕事を続けるつもりで「お客さんに『笑顔がいいね』と言ってもらえるのが励みになる。人力車が旅の思い出に残ればうれしい」と話した。

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