なぜ今!? 名作映画「まさかの続編」製作の裏側を考察!『ブルース・ブラザース』再々結成の噂や『ボーン』シリーズ続編情報も

『ブルース・ブラザース』© 1980 Universal City Studios, Inc. All Rights Reserved.『ブルース・ブラザース2000』© 1998 Universal City Studios Productions, Inc. All Rights Reserved.

ストーンズとビートルズの話題に沸いた2023年

2023年10月、ローリング・ストーンズの7年振りとなるアルバム「ハックニー・ダイアモンズ」が発売され、全英チャート1位を記録した。2016年発売の前作「ブルー&ロンサム」が先祖返りっぽいブルージーなアルバムだったのに対し、そのパワフルさと若々しい感性にびっくりさせられたが、彼らの結成は今から62年も前の1962年なのだ(筆者が生まれた年である)。1973年の初来日中止以降、“絶対に不可能なこと”の代名詞となっていたローリング・ストーンズ日本公演が初めて実現した1990年の感激から数えても、既に33年経っている。この2023年での快挙がいかにすごいことか、若い世代のファンはなかなか実感できないかもしれない。

そして、その「ハックニー・ダイアモンズ」にもゲスト参加していたポール・マッカートニーが、リンゴ・スターと共にビートルズとしての“最後の新曲”=「ナウ・アンド・ゼン」を発売し全英チャート1位を記録したのが昨年の11月。ビートルズもまた結成(デビュー)は1962年、解散が1970年。ジョン・レノンが亡くなったのは筆者が高校生のときだったが、そのレノンの遺した音源から「フリー・アズ・ア・バード」(1995年)と「リアル・ラブ」(1996年)を奇跡の“新曲”として発表してから、さらに27年も経っている。

人生の終焉期に差し掛かった爺さんたちが感傷に浸っている、と冷ややかに傍観することなどできない、現役バンドとしての圧倒的なクオリティで60年以上前のデビュー時と変わらぬ成功を収めた両バンドの新作には、まさか、ここへ来てこんな光景を目の当たりにすることが出来るなんて、と還暦を超えたファンとしては血が滾るような想いなのだ。

架空のヘヴィメタルバンド「スパイナル・タップ」まさかの再結成?

こうした、ローリング・ストーンズやビートルズの時空を超越したかのような活躍ぶりに刺激を受けてか、もうひとつの伝説のバンドが、こちらも40年振りに再結成されることになった。――そのバンド名はスパイナル・タップ。そう、モキュメンタリー映画『スパイナル・タップ』(1984年)の主人公である架空のヘヴィメタルバンドだ。

ナイジェル・タフネル(リード・ギター/演:クリストファー・ゲスト)、デヴィッド・セント・ハビンズ(リード・ギター/演:マイケル・マッキーン)、デレク・スモールズ(リードベース/演:ハリー・シェアラー)による架空のバンドだが、スパイナル・タップは実は3枚のアルバムを実際にリリースしている実力派バンド。そして、映画『スパイナル・タップ』は、“いかにも実際にありそうなヘヴィメタルバンドの裏側”に密着した風を装っている風刺に満ちた偽ドキュメンタリーだが、2002年にはアメリカ議会図書館によってアメリカ国立フィルム簿に登録された、つまり国宝的扱いとされている伝説の映画なのだ。

同作品の脚本・監督は『スタンド・バイ・ミー』(1986年)や『恋人たちの予感』(1989年)で知られる名匠ロブ・ライナーで、劇中ではスパイナル・タップを取材する架空の映画監督役で出演もしている。……そのロブ・ライナーが、何とオリジナル版と同じメンバーにて続編『スパイナル・タップ2』を製作することを発表。2024年2月に撮影が開始されるのだという。

伝えられているところでは、『スパイナル・タップ2』には、何とポール・マッカートニー、エルトン・ジョン、カントリー歌手のガース・ブルックスが出演予定だという。まさに、“まさかの続編”なのだが、今からその完成・公開が楽しみだ。

長い空白期間を経ての続編製作の試みの醍醐味とは?

このように、長いインターバルを経て“まさかの続編”が製作されるケースは近年のある種の流行で、代表的なところでは29年振りの『ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え!』(2020年)、35年振りの『ゴーストバスターズ/アフターライフ』(2020年)、36年振りの『トップガン マーヴェリック』(2022年)、54年振りの『メリー・ポピンズ リターンズ』(2018年)などがある。昨年公開の『エクソシスト 信じる者』でも、オリジナル版の母親役だったエレン・バースティンが50年振りに同じ役で登場、ラストにはもう一人の50年振りサプライズ登場もあって話題となった。

こうした“まさかの続編”については、以前も一度このコラムで紹介したことがあるが、映画としては続編だが別の登場人物による別の物語、というのではなく、オリジナル版に出演していた俳優が、齢を重ね、そのまま同じ役を長いインターバルを経て再び演じる、というのが、こうした“まさかの続編”の醍醐味だと言えるだろう。

『スター・ウォーズ』シリーズでも、最初の旧三部作(エピソードⅣ~Ⅵ)のあと、次に製作された新三部作(エピソードⅠ~Ⅲ)にはさほど食指の動かなかった古いファンたちが、直近の三部作(エピソードⅦ~Ⅸ)に大いに期待し、そして満足したのも、やはりオリジナルの三部作に出ていたハリソン・フォード、キャリー・フィッシャー、そしてマーク・ハミルがそのままハン・ソロ、レイア姫、ルーク・スカイウォーカーとして出演したからに他ならない(※これには当然ながら賛否あり)。……逆にいえば、ラストにレイア姫(キャリー・フィッシャー)が出てくるサプライズのあった『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016年)を別にすると、ディズニーによる同シリーズの番外編とかスピンオフに一部オールドファンがいまいち興味を持てないのは、純粋にビジネスライクな発想のせいだろう。

『ボーン』シリーズの再開を決めたマット・デイモン

久しぶりに続編が制作される作品としては、マット・デイモン主演のスパイ・アクション『ボーン』シリーズがある。第1作『ボーン・アイデンティティ』が製作されたのは今から22年前の2002年のこと。――米国CIAが3000万ドルかけて作り上げた人間兵器の諜報員ジェイソン・ボーンは、格闘技や武器の扱い、車の運転テクニックはもちろん、語学力も危機察知能力も最高の達人だが、要人暗殺ミッションをしくじって撃たれ、記憶を失ったという設定。背景には、ターゲットの家族を目にして非情に徹しきれず暗殺を躊躇した人間味があり、彼が自らのアイデンティティを回復させていくことが物語のキモとなっていた。

超人的なヒーローである『ミッション:インポッシブル』のイーサン・ハントや、秘密兵器を涼しい顔で使いこなすロジャー・ムーア時代のジェームズ・ボンドと違って、傷つき、悩みながら孤独に戦うボーンはリアリティのあるキャラクターとして多くの観客に支持され、続編の『ボーン・スプレマシー』(2004年)、『ボーン・アルティメイタム』(2007年)、『ジェイソン・ボーン』(2016年)、そしてスピンオフの『ボーン・レガシー』(2012年)やドラマシリーズ『トレッドストーン』(2019年~)などが既に公開され、いずれも好評を博している。それらは、ダニエル・クレイグ版『007』シリーズのボンドの設定にも少なからぬ影響を与えているように思う。

その意味では、何十年振りの“まさかの続編”とは異なり、コンスタントにシリーズとして製作されている『ボーン』シリーズだが、それでも『ジェイソン・ボーン』からは8年振りとなるわけで、まだマット・デイモンの続投すら確定していない段階とはいえ、どのような展開の新作となるのか、要注目だ。

伝説の『ブルース・ブラザース』と賛否両論だった続編『ブルース・ブラザース2000』

もう一本、久しぶりの続編プランとしては、故ジョン・ベルーシとダン・エイクロイドのコンビで一世を風靡した『ブルース・ブラザース』(1980年)の続編プランが8年ほど前からエイクロイドによってメディアに語られていて、脚本も既にできているという。

オリジナル版は、音楽マニアとして知られるジョン・ランディスが監督を務め、ジェームズ・ブラウン、キャブ・キャロウェイ、アレサ・フランクリン、レイ・チャールズといった大物ミュージシャンが登場して音楽ファンをも唸らせたほか、スパイナル・タップ同様に劇中の架空のR&Bバンドとして結成されたブルース・ブラザースが、実際にジェイク(ベルーシ)とエルウッド(エイクロイド)をメインボーカルとして音楽活動も行った。

1982年のジョン・ベルーシの急死後、1998年には同じスタッフ・キャストで『ブルース・ブラザース2000』(1998年)が製作され、新たにB・B・キングやエリック・クラプトンが出演するサプライズもあったものの、ジョン・ランディスの演出は前作ほどの突き抜け感はなかったように思う。

ランディスは『トワイライト・ゾーン/超次元の体験』(1983年)撮影中の不幸な事故で経済的にも精神的にも大きなダメージを受けたはずだが、もし本当に『ブルース・ブラザース』の新作が製作されるなら、ぜひともまたランディスに監督してもらい、エッジを取り戻してもらいたい。

今後、まさかの続編製作が期待される幻の作品を勝手に大予想!

さて、リドリー・スコット監督、ラッセル・クロウ主演でアカデミー賞作品賞・主演男優賞に輝いた『グラディエーター』(2000年)が、新たにポール・メスカル主演で続編製作に入るというニュースもあるが、オリジナル版の主演俳優が、長いインターバルを経て再び同じ役を演じる“まさかの続編”パターンだと、あまり知られていないと思うが、実はジョニー・デップの代表作『シザーハンズ』(1990年)にも、続編にあたる短い特別映像が製作されている。

それは、2021年2月に行われたスーパーボウル(全米が注目するNFLの頂上決戦)のハーフタイムで放送されたキャデラックのCMで、前作でデップ演じるエドワードと結ばれたヒロイン=キム役のウィノナ・ライダーが31年振りに同役で登場、二人の間に生まれた息子エドガーをティモシー・シャラメが演じていた。

同じくデップの代表作『チャーリーとチョコレート工場』(2005年)の前日譚『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』(2023年)でデップ=ウィリー・ウォンカの若き日を演じたシャラメが、映画版として『シザーハンズ』の続編に主演するのはありそうな話だ。

ほかに、個人的には『スパイナル・タップ2』の勢いで、ロブ・ライナー監督にはぜひ『恋人たちの予感』の続編も製作してほしい。――オリジナル版の主演を務めたビリー・クリスタルもメグ・ライアンも齢を重ねたが、昨年12月に、クリスタルはケネディ・センター名誉賞を受賞し、お祝いのスピーチをしたロバート・デ・ニーロは「君はまだ75歳だ。つまり、大統領に選出されるのに最適な年齢まであと6年ある」と、同じく会場にいたジョー・バイデン大統領を引き合いに出して笑わせていたが、もちろん、会場にはロブ・ライナーもいた。

一方のメグ・ライアンも、監督・主演を務める新作『What Happens Later(原題)』で久しぶりにラブ・コメに復帰することが伝えられたばかり。ロブ・ライナー監督、ビリー・クリスタル&メグ・ライアン主演、ゲスト出演ロバート・デ・ニーロで『恋人たちの予感2』が作られるというのも、案外正夢になるのではないだろうか?

文:谷川建司

『ジェイソン・ボーン』『ボーン・アイデンティティー』『ボーン・アルティメイタム』『ボーン・スプレマシー』『ボーン・レガシー』はCS映画専門チャンネル ムービープラス「ボーンシリーズ イッキ観!」で2024年1月放送

『ブルース・ブラザース』『ブルース・ブラザース2000』はCS映画専門チャンネル ムービープラス「ブルース・ブラザース イッキ観!」で2024年1月放送

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