長崎・五島から世界へ! アルゼンチン女子サッカーリーグ 初の日本人プロ江頭さん 古里思い飛躍誓う

アルゼンチンの女子プロサッカーリーグでプレーする江頭さん(本人提供)

 長崎県五島市出身で、南米アルゼンチン女子サッカーリーグ初の日本人プロとなった選手がいる。江頭一花さん(21)。地球の裏側で奮闘する江頭さんは古里への思いを胸に「夢、目標に向かって、大きく成長したい」と飛躍を誓う。
 五島市岐宿町で3人きょうだいの長女として誕生。成長とともに外でよく遊び、近くの川でカニを取ったり、近所で飼われていた牛や馬と触れ合ったりしていた。

「上の舞台で戦いたい」と飛躍を誓う江頭さん=五島市

 父龍介さん(48)は陶芸教室の講師。江頭さんが4歳の時、焼き物に本格的に取り組むため、信楽焼で有名な滋賀県甲賀市へ引っ越した。サッカーとの出合いは9歳。地域で盛んに行われていて、地元クラブに入部。女子が4人いてなじみやすく、男子に交じって個人技を磨いた。
 高校卒業後、なでしこリーグ1部の伊賀FCくノ一三重(三重)に入団。だが、公式戦出場はなく、ベンチ入りもできない日々が続いた。練習してもうまくいかず「実力不足だった。大好きなサッカーがしんどくなり、もう無理と思った」。
 こうした中、知人に相談すると海外でのプレーを勧められ、アルゼンチンへのサッカー留学を手がける会社を紹介してくれた。
 元々、海外でのプレーに憧れがあった江頭さん。だが、国内のリーグで2年間実績を残していない。悩む中、伊賀のチームメートが「やるなら今じゃないの。失敗したら戻ってくればいい」と背中を後押ししてくれた。両親も遠く離れることを心配したが、決断を理解し応援した。2023年1月、同国の女子サッカープロ1部の「エクスクロジオニスタス」に入団した。
 同リーグは19年にプロ化。年々レベルと人気が高まっているという。1部は20チーム。江頭さんは30試合近くにFWとしてほぼフル出場。体格で上回る相手に負けず、得意のドリブルを生かし10得点を挙げた。

アルゼンチン代表のメッシ(右)と写真に納まる江頭さん(本人提供)

 本拠地は首都ブエノスアイレス。極端な物価高騰など生活面で戸惑うこともあったが、スペイン語を学びながら現地の料理も覚えた。気さくなチームメートたちは歓迎してくれ、身ぶり手ぶりで練習メニューなどを教えてくれた。同国サッカー協会主催の式典にチームの代表で出席する機会を得て、憧れの同国代表のメッシ選手と対面。記念写真も撮った。
 1年間戦った自信を胸に来季は別チームに移籍し、さらなるレベルアップを狙う。目指す先は強豪スペインのリーグ、そして女子日本代表「なでしこジャパン」だ。9歳の時、女子サッカーW杯で優勝した日本選手の姿が強く印象に残っている。「(海外挑戦前の)1年前は全然考えることができなかった。でも世界を体感し、もう一度、上の舞台で戦いたいと思うようになった」と力強く語る。
 昨年12月、2人の祖母が暮らす五島市に2年ぶりに帰省。古里の自然を満喫した。「五島で生まれ育って良かった。自然体で過ごせる一番好きな場所」と笑顔を見せる。五島から世界へ。自身の可能性を信じ、挑戦を続ける。

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