【連載コラム】第45回:大きな不安を残すドジャースの先発投手陣 180イニングを計算できる投手は皆無

写真:大谷、山本を加えMLB最強との声もあるが…… ©Getty Images

年が明けて2024年になりました。皆様ご存じのとおり、MLBの2024年レギュラーシーズンはドジャース対パドレスの韓国開幕シリーズからスタートします。エンゼルスからFAとなった大谷翔平と10年7億ドルの歴史的な契約を結んだドジャースは、ポスティング制度によるメジャー移籍を目指していた山本由伸と投手史上最高額となる12年3億2500万ドルで契約し、レイズからトレードで獲得したタイラー・グラスノーとも5年1億3656万2500ドルで契約を延長。昨季100勝を挙げ、11年連続のポストシーズン進出を成し遂げたチームにこれだけの新戦力が加わったことで「メジャー最強チームになった」とワールドシリーズ制覇を期待する声が高まっています。

しかし、昨季も弱点となっていたドジャースの先発投手陣は、決して盤石の布陣になったわけではありません。昨季はトミー・ジョン手術のリハビリに専念したウォーカー・ビューラーのほか、トニー・ゴンソリンやダスティン・メイが故障離脱。フリオ・ウリアスはDV疑惑で離脱してしまい、故障がちなクレイトン・カーショウの24先発&131回2/3がチーム最多という状況でした。ダイヤモンドバックスとの地区シリーズにはカーショウ、ボビー・ミラー、ランス・リンという先発トリオで臨みましたが、3投手とも役割を果たせず、屈辱のスイープ負け。今オフ、ドジャースは「最優先事項」だった大谷獲得に成功したあと、先発補強に注力し、山本とグラスノーを手に入れたというわけです。

今季は大谷が右ひじの手術のリハビリで投げられないため、山本、グラスノー、ビューラーが3本柱を形成。昨季メジャーデビューして11勝を挙げたミラーが4番手に入り、5番手はエメット・シーアン、ギャビン・ストーン、ライアン・ヤーブローらが争う見込みとなっています。しかし、山本はまだMLBのマウンドで1球も投げておらず、メジャー1年目からどれくらいやれるかは未知数。千賀滉大(メッツ)がメジャー1年目に中4日の登板が3度しかなかったように、1年目は慎重に起用される可能性もあります。エース級のポテンシャルを持つグラスノーは非常に故障が多い選手として知られており、昨季の120イニングが自己最多。メジャー8年間で規定投球回をクリアしたシーズンが一度もありません。2022年シーズンに開幕投手を務めたビューラーは2度目のトミー・ジョン手術からの復帰1年目。イニング制限が設けられる予定となっており、フル稼働は期待できないでしょう。

山本、グラスノー、ビューラーと名前だけを見れば非常に豪華な3本柱ですが、残念ながらシーズン30先発&180イニングを計算できる投手は一人もいないのが実情。4番手のミラーも「2年目のジンクス」に陥る可能性があり、過度な期待は禁物です。昨季のドジャースは135イニング以上投げた投手が一人もいないにもかかわらず、2位以下に大差をつけて地区優勝しており、「多くのイニングを計算できる投手がいない」というのは大した問題ではないのかもしれません。とはいえ、ワールドシリーズ制覇の可能性を高めるためにも、シーズン開幕までに計算できる先発投手を1人加えておくのが理想だと思います。

FA市場でブレイク・スネルを狙うのもよし。トレード市場でシェーン・ビーバー(ガーディアンズ)やコービン・バーンズ(ブリュワーズ)を狙うのもよし。ドジャース先発陣の「ラストピース」が誰になるか、今後の動向に注目です。

文=MLB.jp 編集長 村田洋輔

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