【能登半島地震】地震の中で産声 山田さん、七尾で里帰り出産

赤ちゃんを笑顔で見つめる山田さん(右)=3日、七尾市の恵寿総合病院

 「大変な時に無事生まれてくれてありがとう。強い子に育ってほしい」。地震発生後、七尾市内の病院では赤ちゃんが産声を上げた。余震が続いて不安な母親を懸命にサポートし、小さな命をつないだ医師や看護師。新しく生まれる命が希望の光となっている。(七尾支社長・安田佳史)

 震度7を観測した1日午後4時10分の地震から約10時間後、恵寿総合病院では山田拓さん(33)と優美さん(35)夫妻の第一子となる長女が誕生した。体重は3130グラムだった。

 里帰り出産で11月から実家がある志賀町徳田に滞在していた優美さん。地震が発生したのは陣痛が起きてから約2時間後だった。壁がひび割れするなどの被害に遭い、「こんな大きな災害時に受け入れてくれるのか」と心配しながら恵寿総合病院に連絡した。

 「すぐに向かってください」との返事を受けて1日午後7時半ごろに病院に到着。2日午前2時5分ごろに赤ちゃんを無事出産した。

 地震発生後、恵寿総合病院前の道路は隆起して車が通れない状況だった。断水が続いて井戸水を使うなど非常時の対応を強いられている。

 恵寿総合病院では3日も輪島市内の妊婦が訪れた。産婦人科長の新井隆成医師(60)は「被災地にもお産を控える妊婦がいる。二つの命をみんなで守る意識がもっと広がってほしい」と話した。

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