何もかも足りない 「命危ない」灯油あと1日 老人ホーム職員路上で訴え

手書きのホワイトボードを掲げて支援を求める施設職員=4日午前11時20分、輪島市内

  ●輪島・あての木園 

 「灯油残り1日、水も少ない。食料もわずか」。4日午前11時20分ごろ、輪島から穴水方面に向かう県道1号で、特別養護老人ホーム「あての木園」(輪島市三井町)の職員が手書きのホワイトボードを掲げていた。利用者、職員ら約120人が施設内にいるが、ストーブの灯油は残り1日分しかないという。「利用者の命が危ない」。職員は悲痛な声を上げた。(社会部・北村拓也)

  ●利用者100人に家族も身を寄せ

 施設で働く栃木翔太さん(38)によると、あての木園には地震発生後、利用者約100人と職員、家族が身を寄せた。利用者の多くは80~90代で、持病を抱えているという。建物内は天井が壊れるなどし、断水、停電も続いている。

 利用者のベッドは被害の少なかった食堂などに集め、石油ストーブで暖を取っている。ただ、冷たい隙間風が吹き込むため夜は特に寒さが厳しく、備蓄の灯油はみるみるうちに減っていった。

 食料は数日分のコメが残っているものの、のみ込む力が弱い人向けの軟らかい食べ物は準備できない。利用者家族の支援を得るのも難しい状況で、体調を崩す人も出始めた。

  ●水差し出され

 「暖が取れないと、凍死者が出かねない」。危機感を募らせた栃木さんは、4日、県道1号沿いでホワイトボードを掲げ、ドライバーに支援を呼び掛けることに。ホワイトボードを見たドライバーの1人は車を止め「これくらいしかできないけど」と、500ミリリットルのペットボトルの水2本を差し出した。

 輪島市市ノ瀬町にある自宅を土砂に流された栃木さんだが、今は利用者の命をつなぐことしか頭にないという。「最低限の衣食住を確保できる環境になるよう、施設への支援がどうしても必要だ」と訴えた。

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