60年ぶり津波警報、但馬の自治体はそのときー 避難は「指示」か「呼びかけ」か 1市2町で割れた対応

香美町役場内に立てられたホワイトボード。情報を集約した様子が分かる=2日午前、香美町香住区香住

 1日に発生した石川・能登半島地震で、兵庫県の但馬の沿岸地域には約60年ぶりに津波警報が発令されたが、沿岸の1市2町で対応が分かれた。香美、新温泉の2町は災害対策本部を設置する一方、豊岡市は職員を集める「1号配備」に。2町は避難指示を出したが、同市は防災行政無線で避難を呼びかけた。(阿部江利、丸山桃奈、吉田みなみ)

 但馬の沿岸地域には1日午後4時22分、津波警報が出された。香美町は同4時50分に災害対策本部を設置し、町内の沿岸部に避難指示を発令。同町が開設した避難所6カ所と、地元住民から報告があった自主避難所10カ所には、最大で1363人(同6時)が身を寄せたという。車で高台や内陸に移動した人もおり、同町は「実際には2千人以上が動いたのでは」とみる。

 新温泉町も災害対策本部を設け、警報発表と同じ同4時22分、町内全域に避難指示を出した。自主避難場所10カ所を含む13カ所に最大495人(同5時半)が避難した。

 豊岡市は対策・警戒本部を置かず、地域防災計画に基づき、一部の課で職員を3割招集する1号配備で対応した。同4時半ごろから竹野小・中学校など5カ所に避難所を開設。同5時過ぎから9時には、竹野庁舎が1回、城崎庁舎が3回、防災行政無線で避難や警戒を訴えたほか、本庁舎も市内全域に5回放送を流した。5カ所の最大避難者は557人(同6時)。自主避難場所への避難人数は集計していない。

 津波の避難指示を出した場合、対象者は4870人という。市の担当者は「津波の避難場所は基本的に高台で屋外。寒い中や夜間の避難指示はかえって混乱を招いたり、体調を崩す人も出たりするかもしれない。『自身のできることで避難を進めてください』と繰り返したほうが効果的だと判断した」とする。

 避難した沿岸部の住民によると、山では暖もとれず寒さはこたえたが、避難者同士で励まし合った。避難が長時間にわたったが、情報が入ってこない状態だったという。

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 内閣府防災担当が避難情報の発令基準などの参考例をまとめたガイドラインでは、大津波警報・津波警報・津波注意報はいずれも「避難指示(ただし、発令対象区域が異なる)」とされる。風水害と異なり、津波は「立ち退き避難」が前提。同担当は「住民には『行政の情報を待たずに逃げる』よう求めている。最終的には市町村の判断になるが、ガイドラインの趣旨を踏まえ、行政もスムーズな避難を後押ししてほしい」とする。

被災地支援で給水車派遣準備「台風7号の経験を少しでも」

 石川・能登半島地震で、但馬では、ポンプ付きの給水車を持つ豊岡、香美、新温泉の1市2町が日本水道協会からの要請に応じ、給水車と職員を派遣する準備を整えた。ただ、4日時点で派遣先や日程は未定となっている。

 香美町では、町内各地に甚大な被害を及ぼした昨年8月の台風7号の経験を踏まえ、災害の被災地に派遣する「災害支援チーム」の設置運営マニュアルを今月に施行したばかり。災害ごみの処理や家屋被害認定調査、保健師の業務などで支援が必要な自治体が見つかれば、町独自の支援チームを派遣する。

 同町防災安全課は「住家の修繕や事務手続きなど、台風7号での経験を少しでも被災地支援につなげたい」としている。

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