マグロ 卵から育成挑戦/浅虫水族館「いつか一般公開を」/資源管理への関心喚起狙い

2023年夏にマグロの稚魚を育てていた円形水槽を示す三浦さん=23年12月、青森市の浅虫水族館
ふ化から7日ほどたったクロマグロの稚魚=2021年夏(浅虫水族館提供)

 青森市の県営浅虫水族館が、クロマグロを受精卵から育てる取り組みに挑戦している。2023年は猛暑による高水温のためか稚魚が全滅したものの、24年も6~7月に卵を取り寄せて再挑戦する予定。将来的に、育てたマグロを館内で公開し、来館者に資源管理の大切さについて関心を持ってもらうきっかけにしたいといい、同館は「群れで水槽を泳ぐ姿を見せたい」と意気込む。

 卵からマグロを育てる取り組みは20年に始まった。国立研究開発法人「水産研究・教育機構」の長崎県にある研究施設や、マグロの完全養殖に成功した近畿大学の水産研究所奄美実験場(鹿児島県)から卵を空輸し、水族館バックヤードの水槽で育てている。

 同館魚類グループリーダーの三浦弘毅さん(32)は、マグロの資源確保のため漁獲規制が行われていることを踏まえ「持続可能な漁業について、マグロを通して来館者に関心を高めてもらいたい」と挑戦の意図を説明する。

 ただ、稚魚育成には高度な技術が必要で、もともと養殖クロマグロが成魚になる確率は1%未満とされる。民間の水産会社や研究機関に比べると、資金や設備面で劣る水族館にとってはハードルが高い。

 稚魚の成長過程では、魚が水面に張り付く「浮上死」、水槽の底に沈む「沈降死」、共食いなどが次々と起きる。同館では研究機関の助言や学術論文などを参考に、水槽の照明や覆い、餌を工夫するなど試行錯誤を重ねている。

 23年は卵6万個が7月中旬にふ化後、稚魚は徐々に減っていき、8月24日、体長4センチほどに育っていた最後の30匹が全て死んだ。今夏の記録的猛暑による高水温が影響した可能性があるという。ただ、過去には約70日間生きて体長15センチまで育ち、展示水槽に移すまであと一歩の年もあった。

 取り組みの原点にあるのは19年に行ったマグロ稚魚の公開という。「水族館では国内初展示」と掲げたが、水槽の壁への衝突死などで3千匹が約2カ月で全滅した。水族館に「無謀だった」などの批判が多く寄せられた一方、「挑戦に勇気づけられた」とするメッセージもあった。そんな激励に勇気づけられ、挑戦の継続を決めた。

 最近も、川崎市の78歳女性から「あせらずあきらめず、研究を頑張って」とのメッセージが封書で届いた。「励みになる。女性が元気なうちに朗報を届けたい」と三浦さん。その上で「館内のトンネル水槽に20~30匹の群れを泳がせることが目標。生育技術の研究は、三歩進んで二歩下がるといった感じだが、ノウハウを積み重ねて実現したい」と誓った。

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