パラオ医療改善 力の限り/弘前市の医療機器販売会社前会長・阿部さん/車椅子や聴診器 寄贈継続

パラオ国立病院の院長(左)と写真に納まる阿部さん(阿部さん提供)

 西太平洋に位置する島国パラオの医療環境を良くしたいと、青森県弘前市の医療機器販売会社前会長の阿部隆夫さん(74)が同国の国立病院に20年にわたり医療機器の寄贈を続けている。昨年も12月上旬に訪問し血中酸素濃度を測る機器2台を届け副大統領から感謝状を贈られた。

 阿部さんが初めてパラオを訪れたのは1990年代、会社の慰安旅行だった。空が曇っていても海底が透き通って見える海の美しさに心引かれた。パラオは太平洋戦争末期の激戦地。阿部さんは青森県出身者がこの地で100人以上亡くなったことを知り、遺骨収集にも取り組んできた。

 パラオを訪れる中で気になったのが医療環境の乏しさ。国立病院のベッドでは使い古されたシーツを繰り返し使い、手術ができるだけの医療設備もなかった。「国立病院といえど当時の設備は診療所レベル。病院として最低限の診断をできるよう手伝いたい」と寄贈を始めた。医療機器を作る会社と協力し、これまでに車椅子や聴診器、新生児用ベッドなどを贈ってきた。パラオでは昨年から新型コロナウイルスの派生株が流行し、血中酸素濃度を測る機器は診断のきっかけとして重宝されている。

 阿部さんは90年代後半からコロナ禍前まで毎年のようにパラオを訪れていた。12月は4年ぶりの訪問だったこともあり、病院側は「阿部さんが戻ってきた」と喜んだ。

 パラオの医療環境は日本政府の支援などで徐々に整ってきたが、人工透析の機器・設備が不足するなど課題は多い。阿部さんは「自分の体が動く限り、パラオに必要な医療機器を贈り続けたい」と話した。

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