社説:京滋の課題 人口減適応の将来像探れ

 年明け早々から京都、滋賀で大きな選択が控える。

 京都市では、16年ぶりに新たなトップを選ぶ市長選(2月4日投開票)が行われる。門川大作市政4期の評価を軸に、人口流出への対策や財政再建、オーバーツーリズム(観光公害)の抑制など持続的な産業政策が主な争点となる。

 とりわけ目立つ子育て世帯の減少は、訪日客急増などを受けた地価高騰の影響が大きい。市を挙げたホテル誘致の一方、中心部や観光地周辺は住宅やオフィスが不足した。

 市は一部地域で高さ規制を緩和したが、まちの将来像に関わる政策であり、課題と展望について建設的な論戦が不可欠だ。

 立候補を予定しているのは松井孝治、村山祥栄、福山和人、二之湯真士の新人4氏で、28年続いた市職員出身ではない市長となる。市役所の長所、短所を見極めて改革を進められるか。主張の相違点を吟味したい。

 先だって行われる大津市長選(1月21日投開票)は、2期目を目指す現職の佐藤健司氏に、元県議の成田政隆氏が挑む構図となりそうだ。

 中心部は京都市の人口流出の受け皿ともなり、マンション建設が相次ぐ。市役所新庁舎の移転検討や公共施設の更新期も控え、まちづくりの方向性と持続可能な財政運営が争点となる。

 両市をはじめ、自治体が長期的な視点で対応しなければならないのが人口減少である。

 国が昨年末に出した2050年の推計人口は、京都府が20年比19%減の207万人、滋賀県は13%減の122万人。京都市は約22万人減って124万人、大津市も減少に転じて約2万5千人減の32万人を見込む。都道府県別では東京都だけが増え、他は全て減るという。

 安倍晋三政権が約10年前に掲げた「地方創生」は、人口減少を克服すべき危機と捉え、地方が個性を生かして魅力を高めるとしていたが、実際は自治体間で交付金の獲得競争となった。東京一極集中の是正も文化庁の京都移転に続く動きがなく、岸田文雄政権では地方創生の言葉すらほとんど聞かれない。

 どれほどの自治体が地方創生の成果を実感し、将来への展望をつかめているだろうか。

 新年の本紙の対談で西脇隆俊京都府知事は「人口が減っても社会の活力をどう維持するかの検討は進んでいない。後ろ向きにも聞こえるが、非常に重要」と語り、三日月大造滋賀県知事も「人口減少の捉え方を変えることが必要だ」と述べた。

 少子化対策で人口減少を緩やかにする一方、「縮小社会」へ軟着陸するための議論を深めねばならない。

 元日の能登半島地震を受け、京滋でも南海トラフ地震や直下型地震、原発事故への備えを改めて点検することが求められる。

 国と地方が「上下・主従」から「対等・協力」の関係に変わった地方分権一括法が制定されて今年で25年を迎える。

 原点に立ち返り、人口減少に適応した地域社会の未来を切り開く1年としたい。

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