一度は途絶えた伝統の「阿字和紙」復活の団体 国から奨励賞受賞 G7広島サミットでも活用 広島・府中市

広島県府中市の特産に「阿字和紙」と呼ばれる和紙がありますが、生産者がいなくなり、一度は伝統が途絶えていました。この「阿字和紙」を復活させた地元の住民グループが国から賞を受けました。

阿字和紙は、府中市・協和地区の特産で江戸時代前期に生産が始まりました。質の良さで知られ、明治末期から大正・昭和にかけて最盛期を迎えました。

しかし、西洋紙の普及で衰退。1968年には最後の生産者が廃業したことで歴史が途絶えていました。

復活に乗り出したのが、地元住民で作る「協和元気センター」です。2018年に発足し、地元の公民館で活動しています。和紙づくりには40代から80代のおよそ50人が携わっています。

こちらは和紙の原料になるコウゾです。煮て、薬剤で漂白します。コウゾやミツマタは地区内の耕作放棄地を利用して栽培しています。

コウゾの繊維と、トロロアオイから出た粘り気のある液体を混ぜると、いよいよ紙をすく工程です。

取り出された紙は、真っ白に輝いていました。

こちらの女性、和紙を作るようになって2年あまりとは思えないなれた手つきです。

RCC福山放送局 内田博文 記者
「紙すきは楽しいですか」

「協和元気センター」のメンバー
「うまいことできないこともよくあるんですけど。それが自分の腕がまだ、そこまで到達しないってこともあるし、材料づくりからトロロアオイとコウゾの配合とか、その日の温度とか、いろんなことが関係しているんでしょうけど、毎回違う条件のなかでやって、できたらうれしいですし」

メンバーは当時を知る経験者の記憶を頼りに和紙を復活させました。2023年のG7広島サミットでは、各国首脳への贈り物を包む包装紙にも採用されました。

そんな「協和元気センター」が地域の活性化に貢献したとして12月、中国四国農政局から「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」奨励賞を贈られました。府中市では初めての受賞です。

協和元気センター・前原幸男 副会長
「(阿字和紙の可能性は)広がっていくと思います。まだまだ利用価値はこれからみんなで検討していくんですが、たくさんあると思うので、例えばあんどんにしても、これから道は広い、続くと思います」

阿字和紙はことしの府中市・市制70周年記念で、個人や団体へ贈る表彰状にも使われるということです。

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