〈1.1大震災〉伏木の文化財「救出」 高岡市立博物館、被災の蔵から

伏木地区の損壊した蔵から回収した古文書=高岡市立博物館

  ●歴史的価値確認

 高岡市立博物館は8日までに、地震による液状化現象とみられる泥の噴出や住宅の破損などが多数発生した伏木地区の蔵から古文書や屏風(びょうぶ)などを「救出」した。今後、博物館で保存して作成年代や内容などを精査し、歴史的価値を確認する。復旧が進む中で蔵が解体されて、中身が廃棄される懸念があり、博物館は「ふるさとの歴史や当時の風俗を知る貴重な資料。捨てる前に連絡してほしい」と呼び掛けている。

 博物館が引き取ったのは、伏木地区の男性方の蔵にあった屏風と扁額計20点と、文書箱などに入った古文書。被災した男性は、倒壊の恐れのある蔵を早急に解体する必要があったため、博物館に収蔵品の寄贈を打診した。

 仁ケ竹亮介主幹と学芸員の計2人が現場に駆けつけて蔵の中を調べ、歴史的に価値があるとみられる資料を全て引き取った。仁ケ竹主幹は「伏木の歴史や文化を知る資料。回収できて良かった」と話す。

 博物館によると、災害の少ない富山県では被災時における資料回収のノウハウが確立されておらず、同館としても初の経験だったという。高岡市は学術資料の調査・整理を行う「AMANE」(金沢市)と国立歴史民俗博物館の3者で地域資料を保存継承する連携協定を締結しており、今後はこれまで集めた情報を基に資料の状態を確認しながら、要望に応じて回収を進める。

 高岡は加賀藩の庇護(ひご)の元、商人・職人のまちとして栄え、伏木港は加賀藩全体の物資の集散地となったことから、旧家や名家、地主などの蔵には当時の繁栄を示す資料が残っている可能性がある。

 仁ケ竹主幹は今回の震災によって被害に遭った古い建物が解体されると、同時に収蔵していた資料が捨てられたり、流出したりする可能性があると指摘。あくまで生活復興が最優先としながらも、「地元の資料は地元が守り伝えていくことが大原則。高岡の財産として気に懸けてもらいたい」と話した。

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