「経験したことがない環境で生産しなければいけない」トマトはすでに“冬野菜”⁉変わる農作物の「旬」価格高騰の裏側にあるもの

日本では四季を感じるために重要な食材の「旬」。いま、その「旬」が、気候変動によって変わりつつます。中でも変化が激しいのは、野菜を取り巻く環境で農家や料理人が工夫を凝らしています。

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静岡市葵区にある日本料理店です。静岡産の冬野菜カブを使った「キンメダイのかぶら蒸し」が一押し商品です。店主の富樫さんは「旬」を意識して料理を提供していますが、もう一つのおすすめが…。

<「料理と咲けとが路」店主 富樫直人さん>
「トマトのお浸しになります」

一般的に夏野菜といわれるトマトがいま、旬だと話します。

<「料理と咲けとが路」店主 富樫直人さん>
「トマトは、夏というイメージがあると思うけど、冬でもおいしく食べれるように、出荷時期をずらしたり、作り方を調整したりして、生産者さんが、変化に敏感に気づいているかなと思う」

<野崎農園 野崎昭秀代表>
Qトマトを何品種目作っている?
「品種でいうと5品目作っていて、全体で2万5,000本くらい栽培しています」

静岡市葵区にある農園です。夏野菜と言われてきたトマトですが、夏の収穫量が減っています。

<野崎農園 野崎昭秀代表>
「去年も猛暑、猛暑と騒がれていましたけど、トマト栽培の適温が28℃くらいまでと言われていて、ハウスの中でも、対策をして35℃にキープしている状態」

気象庁のデータでは、静岡市の6月から8月の平均気温は年々、上昇しています。2023年は観測史上、最高を記録しました。

<野崎農園 野崎昭秀代表>
Q収穫の最盛期はいつ?
「最盛期は、私の農園ですと、11月から6月までが一番穫れる時期となっています。(トマトが)木についている時間が長い分、甘さとか程よい酸味がのって、美味しい甘味のあるトマトが食べられる。2月からのトマトが人気がある」

ここ数年、トマトの旬は夏場でなく、冬から春に移っているのです。

静岡市駿河区にある種苗店では、全国で栽培している野菜などの種を扱っています。野菜の”旬のずれ”はトマトだけではありません。

<稲吉種苗 望月敏弘取締役>
「葉ネギだと、アザミウマという害虫が大発生したり、葉の先が枯れる『葉先枯れ』という現象があるけど、昼の温度とか、夜温が高いと、どうしても養分が葉の先まで行き渡らなくて、水分の行き渡らなくて、枯れたりして、商品価値が落ちる」

専門家はこれまでの農業の技術で従来の旬に合わせた野菜を生産するのは厳しい状況が訪れていると指摘します。

<静岡大学農学部 切岩祥和教授>
「ベテランの生産者も、経験したことがない環境で、モノを作らなければならなくなっているので、10年前では、上手にできたけど、今の環境に果たして合っているのか、これまでやってこなかったようなことに挑戦しないと、今まで通りのおいしい野菜を提供できなくなってしまうような環境には、もしかしたらなってしまうかもしれないということはある」

2023年も野菜の高騰のニュースを何度も取り上げました。こうした現象は今まで旬とされていた収穫の最盛期が気候変動によってずれてきたことが要因といえるかもしれません。これまでの常識を捨てて農作物の旬が変化していることを理解しおいしく食べるという姿勢が必要なのかもしれません。

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