能登半島地震…倒壊した住宅に残された2人、丸1日かけ救出され心肺停止 30分ごとの余震に悔しさ、必死の救助隊「絶対に見つける」まだ至る所で建物倒壊 2人発見され泣く家族、深々と礼「ありがとうございます」

石川県珠洲市内で行方不明者の捜索活動に当たる県警警察官ら(県警提供)

 能登半島地震で被災した石川県珠洲市に派遣され、行方不明者の救助活動などに従事していた埼玉県警の広域緊急援助隊警備部隊が現地での任務を終え、11日に県警本部で取材に応じた。道路が寸断され十分な資機材が搬入できない状況下、生存を信じて懸命に作業。「厳しい環境だったが、1分でも早く救出したいという気持ちで臨んだ」と振り返った。

 同隊は災害発生時に道路の損壊や建物の倒壊状況などの被災情報の収集や捜索を行う。地震発生直後の1日と4日の2回に分け、計約90人が被害の大きい石川県珠洲市内などに派遣された。

 1日夜に出発した1次派遣部隊が珠洲市内に到着したのは3日午後。現場指揮に当たった同隊大隊長で機動隊の松宮誠一警視は市内に入り「至る所で建物が倒壊しているだけでなく、道路が寸断されていて移動するのが困難だった」と明かす。

 4日から市内の沿岸部で行方不明者の捜索活動を始めた。現地は津波で流された車両が横転し、土砂崩れなども見られた。住民が取り残されている倒壊した木造2階建て住宅では、救助資機材を積んだ大型車両が通行できず、スコップやバールなどで作業。活動中も30分に1度ほどのペースで余震が発生した。もどかしさと悔しさが募ったが、「絶対に見つける」とひたすら手を動かした。

 生存を信じて丸1日かけて救出した2人は、ともに心肺停止状態だった。それでも、家族は涙を流しながら「危険な状況の中、活動していただきありがとうございます」と深々と頭を下げた。松宮警視は「被災者が頼れるのはわれわれだけ。われわれが出動する現場には救助を待っている人がいるんだ」と作業を続けた。

 2次派遣部隊は、5日から同市内の市街地で倒壊住宅などで住民らの安否確認などに従事。指揮に当たった同隊副官で警備課の坂巻正和警部は、被災者から「お巡りさんありがとう。来てくれて安心しました」と笑顔で感謝されたことが印象深かったという。不安を少しでも解消できるよう隊員にも笑顔で接することを指示。「今後も要請があれば、被災された方を一人でも多く救出できるように日頃の準備に努めたい」と語った。

 県警危機管理課によると、これまでに県警から被災地に派遣されたのは同隊のほか、被災地の交通規制や事件発生時の初動捜査などに当たった警察官延べ600人。今後も避難所での生活相談に当たる警察官らが派遣される予定。

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