能登半島地震 被災者に寄り添う#3 災害ボランティアの本質「復興支援は細くても、長く」

北陸を襲った大地震による災害は「命を守る行動」が求められる急性期から、「守った命をつなぐ」亜急性期に入りました。自宅に住めなくなった人たちは避難所生活を強いられ、今後は長引く避難生活での体調管理が欠かせなくなる慢性期に入ります。東北地方太平洋 沖地震や熊本地震の経験や教訓を3回シリーズで共有します。助けが必要な人も、救いの手を差し伸べる人も復興に向けてどの様な考え方が欠かせないのか、学びましょう。3回目は2000年の東海豪雨をきっかけにボランティア活動を開始。ボランティア受け入れを担う組織として、静岡市で災害ネットワーク立ち上げた大石学さんが、「受援力」の大切さと、被災者に寄り添う支援の本質について解説します。※SBS・静岡新聞防災プロジェクトTeamBuddyから転載

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友人の窮地を救いたくて
17年前の東海豪雨※で被災した友人を助けたのがボランティアに関わるきっかけでした。現地のボランティアセンターは、全国から約千人が集まっていました。「地元で災害が起きたら、誰がどこにセンターを立ち上げ、ボランティアを受け入れるのか」という疑問から静岡市に帰って聞いて回ったところ「誰」も「どこ」も決まっていない―。大きな危機感に突き動かされ、活動を始めました。

気付かされた「災害支援の本質」
初めは現場での経験を積むことに専念しました。全国各地の被災地で汗をかき、さまざまな団体のやり方を勉強しましたが、力仕事に感謝されて満足という活動が多い中、「足湯」や「茶会」を開催している団体に、支援の本質を学びました。がれきは撤去できますが、災害で壊れた心を癒やすのには長い時間が必要です。避難所から仮設、そして復興住宅と生活の場が変わるたびに、一から人間関係をつくり直す必要がありますが、大変な心労です。入れ替わり訪れるボランティア団体への対応も、時には負担になります。

復興支援はやがて来る日への「仲間づくり」
足湯は「傾聴」の時間です。また、被災地では地域のきずなも傷ついているので、被災者同士の交流の場づくりとして茶会があります。子ども向けの会を開いた際、スタッフが1人の子どもに「今度はいつ来てくれるの。また津波が来れば会えるの」と言われ、私たちは言葉を失いました。それ以降、心掛けているのは「細くても長い支援」です。復興の各段階で生じる苦悩や葛藤を当事者と一緒に味わって、一緒に悩むことが真の支援だと信じています。
いつかは、私たちが被災者になる日がきます。復興支援は、その時に駆けつけてくれる仲間づくりでもあるのです。

※東海豪雨:2000年9月に名古屋市など中京地区で起きた水害

防災ポイント:「賢い被災者」になるには

まず自分の身を自分で守る
自分が受ける被害を減らす備えは自分にしかできません。住まいの耐震化など事前の準備があって初めて事前の守りが可能になります。一つでも二つでも今できることを確実に実行しましょう。

困った時のお隣さん頼み
被災時、個人あるいは家族だけで解決できる問題には限りがあります。必ず一番近くにいるご近所の力、地域の力が必要となります。普段からご近所さんとのコミュニケーションを取っておきましょう。

災害時はお互い様。「受援力」を身につけよう
お願いをする事は悪いことではありません。ボランティアなど支援者は「助けたい」という気持ちであなたに接しています。「助けをお願いします」の一言が支援者のやりがい、満足感につながります。あなたの「受援力」をアップさせましょう。初めは知らない人を身近に招き入れることに抵抗があっても、一度お願いすると抵抗感がなくなるものです。

本音を話せる場所や友だちを身近に
復興は長い道のりです。災害後も地域に住み続けるために普段から地域のコミュニティーの一員として仲間になりましょう。災害時には心強い味方になります。また、被災後は精神的に不安になる要素がたくさんあります。気兼ねなく話のできる環境を普段から作っておきましょう。

情報をうまく集め、制度やしくみを上手に利用しよう
行政や、地域の避難所や災害時のボランティアセンターからの情報に加え、弁護士会からの災害に関する法律や制度に関する情報など、災害時にはたくさんの情報が発信されます。手続きが簡単になったり、補助金が出たりと、復興を後押しする情報・制度をうまく利用して復興を後押しするパワーに変えましょう。

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