〈1.1大震災〉被災の伏木、癒やす鍋 高岡なべ祭り開幕

熱々の鍋を味わう住民=高岡市伏木コミュニティセンター

  ●初の炊き出し

  ●市中心部では売り上げ一部寄付、募金箱も

 高岡市の冬の風物詩「第38回日本海高岡なべ祭り」は13日、市中心部などで開幕した。今年は1日の能登半島地震を受け、被災地を応援しようと住宅などに被害が出た伏木地区で初めて炊き出しが行われ、住民が熱々の鍋に舌鼓を打ちながら心と体を癒やした。市中心部には売り上げの一部を義援金として寄付する取り組みや募金箱が設置され、被災地へ思いをはせた。

 伏木コミュニティセンター前には特設会場が設けられ、鳥つみれや白菜、大根など具だくさんの「高岡ごっつお鍋」300食や丸長精肉店のコロッケ、お菓子、チョコレートなどが用意された。

 午前11時のスタート前から約50人が列をつくり、順番に鍋を受け取って飲食スペースで味わった。当初は午後3時までを予定していたが、同1時に用意した300食がなくなり、50食を追加。それでも同2時に終了となる盛況ぶりだった。

 アパートの階段にひびが入ったり、家の中が散乱したりした吉岡和美さん(43)=伏木矢田=は「今でも揺れが来れば当時を思い出して恐ろしいが、鍋を食べたことで身も心も少し休まった」と話した。娘の愛奈さん(10)は「体が温まってすごくおいしかった」と笑顔を見せた。

 細木稔明さん(77)とよし子さん(75)夫婦は自宅の風呂のタイルが剥がれ、断水も経験した。それでも会場で他の住民と一緒に鍋を味わって安心感を感じたという。とし子さんは「まだ復旧には時間がかかるだろうが、元の伏木に戻ってほしい」と願った。

 炊き出しは14日も行われ、13日に続いて「高岡ごっつお鍋」を300食提供する。

  ●18種、1万7000食舌鼓 5会場、湯気と雪舞う中

 高岡会場では、クルン高岡や@パークなど五つの会場に分かれて18種類1万7千食が振る舞われた。雪が降りしきる会場では鍋の湯気が立ちこめ、来場者が舌鼓を打った。

 定番の「高岡ごっつお鍋」「海鮮シチュー鍋」「カニ汁」などのほか、山形名物の芋煮など県外のご当地鍋も提供した。高岡商工会議所青年部員らスタッフが、直径約2メートルの大鍋でイカなどを使った海鮮シチュー鍋を作った。

 戸出西部小6年の塩川晴希さん(12)は、家族5人で鍋を食べ比べ、「里芋がとろっとしておいしかった。鍋のおかげで温まれた」と顔をほころばせた。

 @パークでオープニング式典が行われ、角田悠紀市長は「復旧に向けて一日一日進んでいると知ってもらい、ご支援をいただけるとうれしい」とあいさつした。実行委員長の塩谷雄一高岡商工会議所会頭が「ほっとするイベントを開催し、サポートしていきたい」と話した。

大鍋で海鮮シチュー鍋を作るスタッフ=高岡市末広町

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