〈1.1大震災〉朝乃山、被災地に贈る白星 剱岳のまわし着用

  ●「土俵の姿で恩返し」

 大相撲初場所(両国国技館)初日の14日、西前頭7枚目の朝乃山(富山市呉羽町出身、富山商高OB、高砂部屋)は東前頭7枚目の一山本(放駒部屋)を押し出し、新年最初の白星を手にした。能登半島地震で大きな被害を受けたふるさとを気に掛け「いつも通り土俵の上で闘う姿を見てもらいたい。相撲で恩返しするしかない。一番は白星を届けることだ」と、郷土への思いを語った。

 朝乃山が土俵に立つと、会場からは大きな拍手が沸き起こった。被災した北陸への温かいエールも含まれていた。

 先場所で11勝を挙げ、敢闘賞に輝いた一山本との一番。相手のもろ手突きからの喉輪を交えた突き、押しに顎が上がるが、それでも下から懸命にあてがって引かない。こらえて相手が引いたところで一気に足を運んだ。「左手で相手の肘にずっとあてがえていたと思う。逃げる方向に付いていけた」とうなずいた。

 場所前は二所ノ関部屋などに出稽古し、新鋭の大の里(津幡町出身)らと精力的に鍛えてきた。先場所は左脚を痛めて途中出場し、4勝4敗7休で復帰後初めての負け越しを味わい、今年は初日から土俵に立てることに「うれしい」と感慨深げに話す。

 白星で好スタートを切った一年に「稽古ができないまま出場して、先場所はああいう結果になってしまった。初日のために稽古してきた」と手応えをにじませた。

 能登では今も安否不明の人が多くいる現状に心を痛め「場所に入ったのもあるけど、(地震のことを)あまりしゃべれないですね」と言葉は少なく。それでも土俵入りでは富山後援会から贈られた剱岳が描かれた化粧まわしを着用。「関取以上で富山県出身の力士は自分だけ。そこは意識して頑張っていきたい」と話し、土俵に上がる決意を新たにした。

 2日目は東前頭6枚目の金峰山(木瀬部屋)と対戦する。鋭い突き、押しが売りだが、四つや投げもできる相手で、昨年の初場所では際どい勝負の末、白星をもぎ取った。白星を待つ県民のため、富山の大器が奮起する。

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