大学受験でやりたいことを「探す」→「叶える」に変化?今どきの受験目的 背景に「社会環境の変化」と指摘

13、14日に実施された「大学入学共通テスト」を皮切りに、本格的に幕を開けた受験シーズン。Hakuhodo DY Matrix社のシンクタンク「100年生活者研究所」がこのほど、17~59歳の男女453人を対象に実施した意識調査によれば、今どきの受験生の半数以上は進学先での勉強内容を「5年以内」に使いたいと考え、卒業後の短期的な目標を叶えるために進学していることが伺えた。

同調査では、受験を伴う進学をした(もしくは、する予定の)17歳~20代前半までを「イマドキ受験生」と定義。それ以降の世代(20代後半以降)と比較しながら、受験に関する意識を調査した。

まず、受験した(もしくは、これからしようと思う)理由では、イマドキ受験生の72.9%が「いい大学を出るといいところに就職できる」、同じく72.9%が「就職に役立つ資格や免許を取得したい」と回答した。20代後半以降の世代では、これらの理由はともに約50%どまり。イマドキ受験生が就職を強く意識して進学先を選定していることが明らかになった。

17~59歳の男女453人に聞いた「なぜ受験をして進学しようと思ったか(思っているか)」【100年生活者研究所 調べ】

次に、進学先での勉強内容を活用したいタイミングでは、イマドキ受験生の57.1%が「卒業後5年以内」と回答。20代後半以降の世代では43.1%と14ポイントの差があり、イマドキ受験生が短期的な目標を見据えながら勉強していることが判明した。一方、「明確なゴールを意識していない」という回答の割合は、イマドキ受験生が23.3%であるのに対し、20代後半以降の世代では30.9%を記録した。

17~59歳の男女453人に聞いた「進学して勉強する内容は、卒業後の人生のどれくらい先のことを意識して選んだか(選んでいるか)」【100年生活者研究所 調べ】

最後に、進学先で勉強する目的について調査。各目的にどの程度当てはまるかを0~10点の段階評価で聞くと、「やりたいことを叶えるため」に対して9、10点と回答した割合は、20代前半の56.7%が最多。10代でも42.7%と4割を超えた。イマドキ受験生は自分のやりたいことを実現するために勉強している傾向が強いことが判明。また、勉強内容を活用したいタイミングの調査結果も踏まえると、卒業後の短期的な目標が明確にあり、進学先ではそれを叶えるために勉強していることが伺えた。

一方、20代後半以降の世代に注目すると、「やりたいことを叶えるため」に対して9、10点と回答した割合は「やりたいことを見つけるため」のそれと同程度(おおよそ20~30%)。将来の目指すべき姿を探しながら勉強に向き合う姿勢も特徴として挙がった。

17~59歳の男女453人に聞いた「進学先でどのような勉強がしたいと思い、受験勉強を行っていたか(行っているか)」※気持ちに近いものを10(とても当てはまる)~0(まったく当てはまらない)で回答【100年生活者研究所 調べ】

同研究所の古田めぐみ研究員は世代間で学びへの向き合い方が異なる背景を「社会環境の変化」と指摘。「ブランドのある大学に入って大企業へ就職し、終身雇用で働く『シングルレール』な人生が主流だった時代では、一つの仕事・職場にとどまる中長期的な視点が当たり前だったため、進学先が『将来を模索する場』であったと思います」と分析した。一方で、近年は転職が一般的になるなど多様な働き方が認められている「マルチルート」に変化。「言い換えれば、卒業後でもいろいろなキャリアを築く余地があるからこそ、まずは短期的な視点で目の前の目標を叶えるために、“今”ほしいスキルを学ぶ場に変わってきていると考えています」とした。

(よろず~ニュース調査班)

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