スタートアップ支援先進国「ドイツ」から学べ 成功の鍵は「大学」との連携

テレビ愛知

スタートアップ企業の育成や、地域企業との連携を促進する支援拠点であるステーションAiが今年10月にオープン予定です。そこで、スタートアップ企業が愛知で育つために必要なことを、スタートアップ支援の先進国・ドイツで2か月間取材した中日新聞の森記者に解説していただきます。

―――今回森さんが取材したドイツはスタートアップの支援が盛んだそうですね。

そうなんです。スタートアップへの投資額でみると、ドイツは78億ドルでヨーロッパの中でイギリス、フランスに次ぐ3位となっています。時価総額10億ドルを超える「ユニコーン企業」の数は31社で、イギリスに次ぐヨーロッパ2位となっています。

―――スタートアップの支援に特に力を入れている都市があるということですが。

南部のミュンヘンという都市で人口は160万人ほど。自動車のBMW本社や電気メーカーがあるなど製造業が盛んでどこか愛知と似ています。ミュンヘンだけで、ユニコーン企業が6社もあります。

―――ミュンヘンにあるスタートアップを取材されたということですが。

チャージXという電気自動車向けの充電器を開発しているスタートアップです。こちらの充電器は、設置が非常に簡単で複数の車を効率的に充電できるようになっています。企業やホテルなどへの導入が進んでいて、ミュンヘンで注目されているスタートアップのひとつになっています。

ミュンヘンのスタートアップ「チャージX」

―――ミュンヘンでスタートアップが順調に育ったのはなぜでしょうか。

ミュンヘン工科大が2002年に設置した起業支援組織「ウンターネーマートゥム」がエコシステムの中心になっています。ヨーロッパでも最大規模の起業センターで、年間約50のスタートアップが生まれています。

―――愛知のステーションAiとの違いは、行政主導ではなく大学主導なんですね。なぜ大学が拠点を担っているのでしょうか。

スタートアップが生まれるためには、高い専門性と技術、人材が求められます。そうした専門性を持つ一番の組織は、研究機関・大学です。技術的な目利きは行政ではなかなか難しいと思います。

―――名古屋にも多くのノーベル賞受賞者を出している名古屋大、技術系では名古屋工業大もありますよね…

はい。特に名古屋大は近年、起業支援に力を入れています。こうした地域の大学とうまく連携し、エコシステムを作っていくことが、科学に裏打ちされた革新的な技術である、いわゆる「ディープテック」を持つ競争力のあるスタートアップの育成に役立つと私は思います。

―――大学とどう力を合わせるかがカギになるということですね。

取材して感じたことですが、ドイツでは、多くの人が「スタートアップ支援における大学の重要性」を語っていました。一方、愛知県の関係者からは、こうした声を聞くことがほとんどありません。今後、ステーションAiも大学とどう力を合わせるかがカギになります。

―――ステーションAiができますが、成長という部分でみると長い目で見たほうが良さそうですか?

今回の取材で、スタートアップ支援の長い歴史を知り、支援が一朝一夕には行かないことを思い知りました。愛知県も10年、20年という長い目で支援を続けていく必要がありそうです。

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