【能登半島地震】金沢大学附属病院の救急現場は「ほぼ限界に」 行政主導で患者移送の手立てを

テレビ愛知

能登半島地震による石川県の被害の現状は… 災害関連死の増加に懸念も

能登半島地震の発生から半月。被災地は断続的に雪が降り、厳しい寒さに見まわれています。

石川県ではこれまでに222人の死亡が確認され、22人の安否が分かっていません。現在も1万8000人以上が避難生活を続けていますが、震災後にけがの悪化や身体的負担による病気などで亡くなったとみられる災害関連死は14人。避難所では断水が続き、トイレの衛生環境が悪化していることなどから、さらに災害関連死が増えるのではないかと懸念されています。

ただ、いざという時に重篤な患者を受け入れる現地の救急医療機関はいま、窮地に。果たしてその現状とは?

「ほとんど病院に住んでいる状態」 金沢大学附属病院の救急科長が医療ひっ迫の現状を語る

今、石川県の医療現場で何が起きているのか、金沢市内の病院の医師に話を聞きました。「すでに限界に近い状況だ」と悲痛な声を上げています。

「医療ひっ迫、この一言です。」現場の窮状を訴えるのは、金沢大学附属病院救急科の岡島正樹科長です。

―――医療のひっ迫、具体的にはどんな状況ですか?

「いま現在(1月14日)までで言うと、(能登半島地震での搬送者)は140人。(病床使用率は)85%近くまでいっていますので、通常の15%増し。かなりキツイ状況で回っていると。」

―――岡島科長もかなり忙しい状況ということでしょうか?

「(1月14日)午前7時半に出勤すると、会議の準備をして、8時からの災害の会議に出ると。そこからDMATの活動ですね。ずっとします。15時45分から夜勤に入ります。普通の救急車(での搬送患者)をみんな診ると。そして翌午前8時半に(夜勤が)明けるわけです。
(その後)病棟にいる患者さんを診て、災害の会議に出て、災害のどんな患者さんが運ばれてくるのかを把握して…。時間外労働が今もうすでに100時間。ほとんど病院に住んでいるという状態です。」

地震の被害が深刻な能登地区から100キロ以上離れている金沢大学附属病院。その救急科は重篤な患者に対応する「三次救急」を担います。症状の軽い患者に対応する「一次救急」や、手術や入院が必要な患者に対応する「二次救急」とは役割が違います。しかし現在、「三次救急」としての役割が果たせないほどの状態だと話します。

「どんどん空きベッドが埋まってしまって、ほぼ限界に」 救急現場の医師が語る窮状

「発災当初は、いわゆるクラッシュ症候群。がれきの下に長時間いたりして、筋肉が挫滅してしまうような外傷(の患者)が多かったですね、とにかく。次は、病院避難ということが行われたわけです。能登地区の病院でインフラが途絶したので、なんの検査もできないし、なんの治療もできないと。治療を継続するために(患者を)出すぞと。1日50人とか送られてくるので、この時のエピソードはほとんど記憶がないです。

次は施設避難というのがあったわけです。いわゆる寝たきりの患者さん。インフラが破壊されていますので、その施設の方たちを今度は移動するというミッションが起こったので。つまりそれは、医療が必要ではないけども、住む場所がないので、病院に一時預かってもらうしかないと。本来、金沢大学附属病院は、そういう患者さんを受け入れる施設ではない。“三次救急”ですので。でも受けざるを得ないような状況が起こっていると。

そこに加えて、避難所で発生した感染症。軽症の患者の(受け入れ)要請が1月14日だけで、10人。今、どんどん空きベッドが埋まってしまって、ほぼ限界に来ています。

本当に(治療が)必要な7歳の女の子、交通事故に遭いました。“先生、これは三次(救急)です。ほかどこも受け取れません。金沢大学附属病院しかないです。運びますね”と言われた時に、いや軽傷の患者がこれだけ来ていると。7歳の子は受け入れられないと。そういった場合、7歳の子はどうなるのでしょう?」

―――そういう状況を踏まえて、今、どんな支援を必要としていますか?

「石川県内でなんとかしようとして、被災地から初めは金沢に患者を運んだわけです。そのたまった金沢の患者をどこに出すかは、まだ何の指針も示されていない。被災地から(直接、患者を石川県の)外に出すことはしています。行政主導で金沢(の負荷)を軽くする方向を考えて欲しいなと思っています。」

© テレビ愛知株式会社