2週間ぶり風呂「生き返った」 被災者…でも能登に戻りたい 南加賀へ2次避難進む

野々市市の2次避難先に到着し、保健師から血圧や体温の測定などを受ける輪島市鵠巣地区の住民=16日午後2時45分、同市老人福祉センター椿荘

 能登半島地震の被災者の南加賀への移動が少しずつ進んでいる。一時孤立状態となった輪島市鵠巣(こうのす)地区の住民115人は16日、野々市市内の避難所に入った。元日以来、2週間ぶりに入浴した被災者は「生き返った」とほっとした表情。一方で、能登の暮らしは恋しく「停電が解消されれば早く輪島に戻りたい」と複雑な思いを吐露する人もいた。

 野々市市には、5歳から90代までの115人が大型バスで移動。メインの避難先となる市老人福祉センター椿荘では、血圧や体温測定など健康チェックを受けて、各部屋に入った。

 夫と避難した水口美子さん(76)=輪島市大野町=は、観光名所「輪島朝市」で野菜や花などを販売していたが、大規模火災で跡形もなくなった。「輪島での避難生活は限界だった」というが、焼け野原となった故郷を思うと胸がつまる。「やりきれない。でも、生きていれば何とかなる」と目を潤ませた。

 市は寒さ対策で掛け布団などの寝具を120セット、急きょ購入して対応した。粟貴章市長は「できる限り丁寧な対応で避難者の要望に応えたい」と話した。

 加賀市は15日、輪島、珠洲市などから避難した計152人を加賀温泉郷の旅館やホテルに受け入れ、累計の避難人数は計764人となった。能美市は、穴水町由比ケ丘地区などの2世帯6人を辰口温泉の2旅館に受け入れた。小松市では約290人が粟津温泉の旅館を中心に8施設で宿泊している。

 被災地能登では、16日午後2時時点で1万6070人が避難生活を続けている。2次避難先として、県内外で1日3万人が受け入れ可能な態勢を整えたが、実際の避難者は累計で1372人にとどまっている。

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