医療で被災地支える 能登半島地震受け出動の災害派遣チーム それぞれの医師が活動振り返る

DMAT関係者によるミーティング=9日午後、石川県珠洲市(和氣さん提供)

 能登半島地震を受けて本県から第1陣として出動した災害派遣医療チーム(DMAT)10隊と、災害派遣精神医療チーム(DPAT)2隊が16日までに、被災地支援を終えて帰還した。DMATの本部運営に携わった獨協医大病院(壬生町)と、DPATとして精神的に障害がある人の診療などを行った県立岡本台病院(宇都宮市)。それぞれの医師が被災地での活動を振り返った。

避難所への搬送確立 DMAT 獨協医大救急医学講座教授・和氣さん

 獨協医大救急医学講座の教授和氣晃司(わけこうじ)さん(55)は6日、看護師ら4人と共に石川県珠洲市に入り、DMAT本部で活動した。

 本部は病院や福祉施設などの被災状況や困り事を把握。解決に向け、各県から派遣されたDMATの役割を決めたり、関係機関との連絡調整を行ったりする。

 市内の高齢者施設の中には、地震の影響で勤務可能な職員が半数になった施設もあった。40人で入所者約100人をケアし、職員の疲弊が懸念された。和氣さんらは入所者の一部の移動が必要と判断。自衛隊などの協力を得て40人を他の避難所に移した。

 11日までの活動で、宿泊施設などの2次避難所までの一時的な受け入れ先となる「1.5次避難所」への安全な搬送方法も確立した。搬送前に要支援者の体調管理を担う拠点を開設し、和氣さんは「他の先生たちと作り上げ、しっかり運用できた」と振り返った。

 20日から再び市内で医療支援を行うという和氣さん。「与えられたミッションを確実にこなしていく」と力を込めた。

現場ニーズ想定以上 DPAT 県立岡本台病院精神科医師・竹内さん

 県立岡本台病院精神科医師の竹内祥貴(たけうちよしたか)さん(37)は5~10日、DPATとして石川県七尾市の能登総合病院を拠点に、被災者の診療などを担った。

 6日は、一緒に被災地入りしたいずれも同病院の看護師上野三枝子(うえのみえこ)さん(45)、精神保健福祉士村嶌泰良(むらしまたいら)さん(33)らとDPATとしては初めて同県輪島市へ。要診療者は数人と聞いていたが、共に市内を巡った他県のDPATには想定以上の相談が寄せられた。

 竹内さんは「通院、入院歴がある人の情報は把握できたが、それ以外のニーズは現場に行かないと分からない」と実感したという。

 同県穴水町では、精神的な病を抱えるため在宅避難を続ける女性を診療した。ライフラインが絶たれても「ここにいたい」と訴える女性。竹内さんは「住みよい場所だったんだろうな」と被災前の町の姿を浮かべた。

 竹内さんは今後の支援について「市町職員らは自分たちも被災者なのに、不眠不休で働いている。心のケアや手助けが必要になる」と語った。

被災地で支援活動を行うDPATの3人=8日午後、石川県七尾市(県立岡本台病院提供)

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