女性だけで狂言、初上演 酒田で27日「まつやま大寒能」

まつやま大寒能に向けて狂言「盆山」の稽古をする柏倉咲希さん(左)と斎藤則子さん=酒田市・松山城址館

 酒田市の松山城址館で27日に上演される「まつやま大寒能」のうち、狂言「盆山」の演者を女性2人が務める。松山能の継承団体「松諷社」(榎本和介会長)によると、狂言を女性だけで上演するのは初めて。演者の1人で、同市東部中1年柏倉咲希さん(12)は「地域の伝統芸能を守っていきたい」と語り、練習に励んでいる。

 松山能は、松山藩主酒井忠恒の時代に江戸勤番の松山藩士が能楽を修得したことに始まる。明治維新後は同団体が継承し、1980(昭和55)年に県無形民俗文化財に指定された。

 毎年1月下旬に上演されている大寒能は今年、会員の仕事の都合で、狂言の演者が1人足りなくなってしまった。地元の小学生が取り組んでいる「子ども狂言」の経験者に出演を打診したところ、小学2~6年時に参加していた柏倉さんが快諾。会員の市職員斎藤則子さん(45)とともに舞台に上がることが決まった。

 上演する盆山は、盗人が盆山を拝借しようと家に忍び込むところから始まる。侵入に気付いた家主は盗人をからかい、犬や猿の鳴きまねをさせようとする。

 今月14日の練習では、斎藤さんが姿勢やせりふの言い回しなどを柏倉さんにアドバイスし、通し稽古を行った。柏倉さんは「迫力ある演技が狂言のおもしろいところ。友だちも見に来てくれるので頑張りたい」と意気込みを語った。自身も子ども狂言の経験者で、就職後に同団体に入った斎藤さんは「成長するにつれて伝統文化に触れる機会は減ってくるが、『やりたい』という気持ちを持ってくれたことがありがたい」と背中を押した。

 まつやま大寒能は午後1時から。入場料は呈茶や雪見の宴(交流会)の料金を含めて前売り2千円(当日200円増)。入場券は市松山総合支所、市総合文化センターなどで取り扱う。問い合わせは同支所0234(62)2611。

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